ユーミンに「浮足立つなよ」と松任谷正隆が忠告した意味とは? (3/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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ユーミンに「浮足立つなよ」と松任谷正隆が忠告した意味とは?

連載「LOVE YOU LIVE!」

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神舘和典dot.
バッファローチェックのシャツにタンクトップ、ショートパンツという“勝負服”で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」のステージに上がったユーミン。モニター画面に陽に焼けて引き締まったふくらはぎが映し出されると客席がわいた。(Photo by seitaro Tanaka)
https://yuming.co.jp/

バッファローチェックのシャツにタンクトップ、ショートパンツという“勝負服”で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」のステージに上がったユーミン。モニター画面に陽に焼けて引き締まったふくらはぎが映し出されると客席がわいた。(Photo by seitaro Tanaka)
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ステージの下手側でバンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆。「夕涼み」のイントロで弾いたローズピアノのインプロビゼーションには、色鮮やかだからこそ悲しくもなる夏の切なさがにじんだ。(Photo by seitaro Tanaka)

ステージの下手側でバンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆。「夕涼み」のイントロで弾いたローズピアノのインプロビゼーションには、色鮮やかだからこそ悲しくもなる夏の切なさがにじんだ。(Photo by seitaro Tanaka)

「いやあー、初めてのフェスですよ。フェスヴァージン。この期に及んで失うものがあるなんて」

 曲間のMCで、5万人がどっとわく。こうなると完全にユーミンのペースだ。

「平成最後の夏フェスにすべり込んで、今日は親子で来てくれているって人も、いると思います。平成はね、CDが売れて、そしてものすごく売れて……、そして売れなくなった時代。平成になったとたん、自分で言うのもナンですけれど、私がメガヒットの火ぶたを切りました。それで、その後、いろんな人が飛行距離を伸ばしていったので、私はライト兄弟みたいな存在かな。平成の始まりごろは、ほんと、ここにいるたくさんの人の、お父さん、お母さんが恋愛していた時期。私も音楽で、すごくお手伝いをしました。だからここに存在しているという人もいっぱいいると思うよね。いいことできたと思っています」

 10代、20代のオーディエンスに、ユーミンはウイットに富んだMCで語りかけた。

 ユーミンの持ち時間は約50分。2曲目以降はフェスのセオリー通り、代表曲をずらりと用意した。「Hello, my friend」「守ってあげたい」「やさしさに包まれたなら」「ひこうき雲」「真夏の夜の夢」「春よ、来い」「卒業写真」……。イントロが鳴る度に聴衆がどっと沸く。

 中盤には、シングルでもなく、ドラマの主題歌でもない、でもファンに愛され続けている名曲も歌った。「夕涼み」だ。濡れた髪、灼けたうなじ……。夏の夕暮れの風景が目に浮かぶ、失った恋を歌う切ないバラードだ。導入部、松任谷が奏でるローズピアノはきらめく波光のようだった。間奏部、もう1人のキーボード奏者、武部聡志が奏でるシンセサイザーは揺らめく陽炎のようだった。

「有名な曲以外にも、由実さんにはいい曲がいくつもある。その中の1つが『夕涼み』です。せっかく集まってくれた皆さんに、夏の思い出をつくって帰ってほしかった」(松任谷)

 このROCK IN JAPANの余韻もさめやまぬ9月22日、「Ghana Presents 松任谷由実 TIME MACHINE TOUR ~Traveling through 45 years~」がスタートする。ユーミンの46年間のキャリアで行ってきたコンサートの名場面を再現しつつ、新しい物語へと展開させるツアーだ。そこで2人に、思い出深いツアーを訊ねてみた。

 松任谷があげたのは、アルバム『天国のドア』と『THE DANCING SUN』のツアー。そして3度にわたって行われたシャングリラの1回目だという。

「ピンク・フロイドやブルース・スプリングスティーンの照明を手掛けるマーク・ブリックマンに依頼したのが1990年の『天国のドア』のツアー。彼は曲の解釈が抜群でした。彼の照明で由実さんの曲が鳴ると、視覚的にも完全に由実さんの世界になった。あのステージは、世の中のすべての人に見せたいと思いました」(松任谷)

 ユーミンがあげたのは1987年からの『ダイアモンドダストが消えぬまに』のツアー。

「レコードジャケットをステージに再現しました。あのアルバムは電子音楽、ジャン=ミッシェル・ジャールやミッシェル・ポルナレフのようなエレクトロをやっています。1980年代に。表現法は違うかもしれないけれど、源泉はかなり近い。その世界を音だけでなく、視覚で表現できたのがうれしかった。とても思い入れのあるヴィジュアルでした」

 今回のツアーでも『天国のドア』や『ダイアモンドダストが消えぬまに』の世界が観られるのか――。楽しみだ。


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神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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