バッファローチェックのシャツにタンクトップ、ショートパンツという“勝負服”で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」のステージに上がったユーミン。モニター画面に陽に焼けて引き締まったふくらはぎが映し出されると客席がわいた。(Photo by seitaro Tanaka)https://yuming.co.jp/
バッファローチェックのシャツにタンクトップ、ショートパンツという“勝負服”で「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」のステージに上がったユーミン。モニター画面に陽に焼けて引き締まったふくらはぎが映し出されると客席がわいた。(Photo by seitaro Tanaka)

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【写真】バンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆

ステージの下手側でバンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆。「夕涼み」のイントロで弾いたローズピアノのインプロビゼーションには、色鮮やかだからこそ悲しくもなる夏の切なさがにじんだ。(Photo by seitaro Tanaka)
ステージの下手側でバンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆。「夕涼み」のイントロで弾いたローズピアノのインプロビゼーションには、色鮮やかだからこそ悲しくもなる夏の切なさがにじんだ。(Photo by seitaro Tanaka)

「必ずかっこよくする。オレを信じろ」

 そう言って松任谷正隆はユーミンをステージに送り出した。

 8月5日、国営ひたち海浜公園で開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」で、ユーミンは初めて夏フェスのステージを踏んだ。

「ほかのアーティストではできない、由実さんだからこその在り方を示したかった」

 そう考えた松任谷が決めたユーミンの衣装はショートパンツにバッファローチェックのシャツ。その下はタンクトップ。そして、テンガロンハット(写真参照)。

「あの“カウガール”のスタイルは、フランシス・コッポラがベトナム戦争の狂気を描いた映画『地獄の黙示録』がヒントになりました。プレイメイトが慰問で、ヘリコプターから戦場に降りてきて踊るシーンがあるでしょ。あのイメージ」(松任谷)

 その松任谷のアイディアに乗ったユーミンはハイテンションでステージに飛び出した。

「発想のもとが『地獄の黙示録』と言われたので、群衆を挑発する気持ちでステージに上がりました。ストッキングをはいて夏フェスのステージに登場したらしらけるでしょ? だから、生足。日ごろからエクササイズしているので。私としては、侍が刀を抜いたような気持ちかな。デビューして45年間、私はさまざまなアイコニックなファッションでステージに立ってきました。トレンチコート、60’sファッション、イヴ・サン=ローラン……。マタドールやフラガールも。カウガールはその中の1つです。私が今までにトライしていないのは、寅さんスタイルくらいでしょう。9月にスタートする自分のツアーでも、ありとあらゆる、色とりどりの衣装をご披露します」(ユーミン)

 カウガールのスタイルでユーミンが登場すると、ステージ前に集まった群衆がウオォー! とうなりを上げた。

 約5万人の観客を笑顔で見まわすユーミン。その姿に、ローリング・ストーンズのヴォーカリスト、ミック・ジャガーが重なった。ミック・ジャガーもユーミンも、目の前の群衆のパワーをそのまま自分のエネルギーにしてしまう。だから、用意された舞台のスケールが大きければ大きいほど、存在感が増し、力を発揮する。

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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