川崎フロンターレから仙台にレンタル移籍中の板倉はJリーグで現在、最も著しい成長を見せる若手の一人。ボランチでも最終ラインでもプレーできるが、今回は仙台と同じく3バックの左がメインポジションになると見られる。ただし、森保監督は2年後の東京五輪を見据え、過密日程の大会、しかも過酷な暑さが予想されるインドネシアで一人の選手に複数のポジションでプレーさせることも視野に入れているようだ。

 板倉のビルドアップ力や長身を生かした空中戦の強さは最終ラインで発揮しやすいが、中盤での“デュエル”(1対1や競り合いなど)が発生しやすい試合では彼の強みが生きてくる。船木と同じく昨年のU-20ワールドカップを経験したものの、大会中にふくらはぎを痛めて消化不良に終わってしまった。代表チームで中心的な存在として引っ張る意識が強く、今回は5月のトゥーロン国際でキャプテンマークを巻いた中山雄太(柏レイソル)も選考外のため、板倉には精神的な面でのリーダーシップも期待される。

 今季のJ1で首位を走る広島で注目の松本は昌平高時代はカットインからのミドルシュートを武器とする左サイドのアタッカーとして鳴らしたが、マルチなポジションでプレーできるパワーとテクニック兼備の大型MF。現在はボランチを主戦場としているが、青山敏弘、稲垣祥というJ屈指のボランチコンビの分厚い壁を破るのに苦労している。それでも、ルヴァンカップで存在感を見せるなどポテンシャルの高さは折り紙つきだ。

 公式戦で継続して試合に出ている選手が大半を占める中で、実戦機会に恵まれていない松本の招集は元広島指揮官の森保監督ならではの選考だが、東京五輪を目指す森保ジャパンの初陣となった昨年11月の『M-150 CUP 2017』に出場したU-20日本代表に選ばれており、あらためて実力を示すチャンスを得た形だ。当時もチームメートだった神谷優太(愛媛FC)やJ2で売り出し中の渡辺皓太(東京ヴェルディ)が当面のライバルになる。

 松本のスペシャリティーは推進力のあるドリブルとシュート力にあり、デュエルでボールを奪える能力も非凡。また、攻守のセットプレーで高さを加えられるメリットもある。資質的にはシャドーやサイドもこなせるが、ボランチが手薄なチーム構成を考えれば、むしろ本職で結果を出してクラブでの評価にも繋げていきたい。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行予定。