「相鉄本線の混雑率が改善した要因については、1時間あたりの本数を24本から26本に増便したためという報告を受けています。本数が増え輸送力が向上したため、混雑率が低下したものと考えられます」

 なるほど、複々線といった線路面の増強がなくても、列車の本数が増えることで改善する場合もあるようだ。

 では、混雑率が悪化したほうはどうか。2017年度と2016年度のデータを比較してみると、1位が東京メトロ丸ノ内線と横浜シーサイドライン、関東鉄道常総線が6ポイントで並んだ。これについて、前出の国交省の担当はこう話す。

「混雑率が悪化した要因については、まだ調査中でわからない部分も多いのですが、丸ノ内線に関しては沿線のマンション開発などによる利用者数増という報告を受けています。都心回帰の影響もあるのではないでしょうか」

 丸ノ内線は7位にも4ポイントでランクインしており、10位以内で唯一、上りも下りも混雑率が悪化している。通勤時間が少ない都心に引っ越すという近年の傾向が如実に現れていると言えそうだ。

 通勤環境の改善のためには、穴場の路線沿線に引っ越すしかないのか……。いや、それ以外にも改善できる方法がある。時差通勤だ。

 東京都では、昨年から夏の期間限定で、「時差Biz」と称した時差通勤の社会実験を実施している。昨年は7月11日から25日にかけて行われ、今年は7月9日から8月10日まで期間を1カ月に拡大して行われた。多くの路線で最混雑時間帯となる、8時~9時を避けて通勤させるのが狙い。企業側としては、8時前か、10時以降に出社時間をずらす形になる。昨年は320社が参加し、今年は2.5倍強の824社が参加。その影響は広まりつつある。

 昨年の成果はどうだったのか、時差Biz運営事務局はこう振り返る。

「昨年の実施期間には、賛同企業の多いエリアでは、2.3%混雑が減少したという改札データがありました。中には東京メトロさんなど、去年の時差Bizがきっかけで通年の時差通勤に切り替えた企業もあります。国が進める働き方改革の両輪として取り組んでいければと思います」

 さらに今年度は1月下旬から2週間程度かけて、冬にも「時差Biz」を実施する予定だという。もし、自分の働いている企業がこの取り組みに参加するようになれば、引っ越さずとも現状のまま、より快適な通勤ライフが送れるかもしれない。

 朝の通勤ラッシュが改善する日は一歩一歩、近づいているようだ。(河嶌太郎)