帰国子女の娘がクラスで浮いた存在に… 鴻上尚史が答えた戦略とは? (5/7) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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帰国子女の娘がクラスで浮いた存在に… 鴻上尚史が答えた戦略とは?

連載「鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」

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 さて、僕のアドバイスは、まず娘さんに、娘さんに分かる言葉で、「この国のかたち」を伝えることです。

 アメリカにも「同調圧力」はある。でも、それは日本ほど強くはない。だいいち、みんな「自尊意識」を持つように教育されている。アメリカの教育の目的は、健全な「自尊意識」を子供に持たせることで、これが「同調圧力」と戦う動機と理由とエネルギーになる。

 一方、日本では、「自尊意識」にたいする教育はほとんどなく、道徳の時間を含めて、「同調圧力」に敏感になることは繰り返し教えられる。

 だから、今、お前は日本と向き合っているんだよと伝えます。

 娘さんは「でも、みんなそんなふうに思ってないよ」と言うかもしれません。

 娘さんは自尊意識を大切にしようとするアメリカに住んだからこそ日本の無条件の同調圧力に苦しめられているのです。高い自尊意識を持つ経験を知らない人が理解できなくてもしょうがないと伝えましょう。

 僕がイギリスの演劇学校に留学している時、クラスメイトに寿司が大好きな奴がいました。彼はいつもスーパーの寿司を買って、昼休み、うまそうに食べていました。

 一度、僕のお気に入りの寿司屋に行こうと誘われました。そこは、日本人ではない人達が経営する「なんちゃって寿司屋」でした。彼、オーリーという名ですが、オーリーは「うまい、うまい」とそれは幸福そうに食べました。でも、僕の目の前にあったのは、寿司ではなく「寿司になろうとしている何物か」と「寿司とは違う方向に走り出している食物」でした。

 でも、オーリーは本当の寿司を知らないのですからしょうがないのです。この時、「これは寿司ではない!」とオーリーに叫んでも、オーリーはきょとんとするだけです。そして、もっと本気で叫んだら、間違いなく怒りだすでしょう。「僕の寿司を否定するのか!」と。

 娘さんがカラフルな服を着て、おしゃれを楽しむ時、「だって、着たい服を着るのは当然でしょ!」と叫んでも、そんなことを経験したことのない人達が理解するのは不可能なのです。


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