■方法論と実務の間の隔たり

 また、現在のSEO業界では、サイトの規模や予算、実行する場面を考えられていない施策も多く、実現できないものも多くあるという。その一例として、鈴木さんはkeywords(サイトを記述する言語であるHTML上で対象ページの内容を表すキーワードを反映し、検索エンジンなどにテーマを伝えるために使う、ページや検索結果には表示されない要素)の利用のされ方についての話をしてくれた。

「かつて検索エンジンの重要な評価対象であったkeywordsは、これを利用した裏ワザが横行したため、2009年9月21日には世界最大の検索エンジンであるGoogleが評価対象にしないことを正式に表明するとともに、ルールを逸脱しているとペナルティを与えるようになりました。その結果、今ではSEO対策に関わる多くの人がkeywordsの利用は無意味とし、逆に、keywordsの反映を推奨している業者やコンサルタントは時代遅れだと現在では断じられるようになっています」

 効果がなく、利用すればマイナスになる可能性があるのだから当たり前の対応に感じられるが、鈴木さんは、検索エンジンはGoogleだけではないので、1つでもkeywordsを評価対象にしている検索エンジンがあるのなら、ペナルティにならない範囲でkeywordsを利用することには意義があると言う。しかし、鈴木さんはそれに止まらず、実行性の観点から考えられればkeywordsを利用する結論に行き着くと話す。

「SEO対策の基本はWebサイト全体はもちろん、Webサイトを構成する各Webページにおいて上位表示を狙うキーワードを決め、ページごとに決めたキーワードに最適化することにあります。そのため、SEO対策ではページごとに決めたキーワードにおいて成果が出ているか確認し、改善していく作業が必須となり、この際に最適なのがkeywordsなのです。選定したキーワードをkeywordsに反映すれば、後で確認する際はもちろん、Webサイトを多人数で管理するときや誰かに作業を引き継ぐときにも、ページと対策キーワードの対応関係を簡単に確認できます。keywordsを利用しなければ、エクセルなどで別管理する必要があり、手間や管理コストが増すだけなので、もしSEO対策の効果がまったくなかったとしても、keywordsの利用を否定するのは合理的ではありません。もちろん、競合サイトに対策キーワードを知られないようにするために別管理することはあるものの、多くのサイトは競合にマークされる以前の問題なのですから業務効率の観点からkeywordsの利用は必然と言えますが、推奨する意見を私以外では聞いたことがありません」

 keywordsは、SEO対策の書籍を読めば必ず目にするほど初歩的なものだが、そのkeywordsの利用法に関しても、現在のSEO業界では表面的な事象にとらわれ、実務を考慮しない利用方法が標準となってしまっている。実行性が伴わなければ、その方法論は絵に描いたであり、成果をもたらすことはできないのだ。

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