どんなテーマを取り上げるにせよ、書く中身は、その時の体調と切り離せない。だから連載では毎回、病気との関わりに触れるようにしている。



 ただ、どれも頭が働く時間をかき集めて書いたものだから、一目で「大丈夫か?」と心配されそうな乱れ方まではしない。結果的に、病気からくる切迫感なども伝わりにくいのではないか、と想像した。

「そんなに元気いっぱいなわけではない」。いわば背景説明のつもりで、今回のコラムは書いた。

 それでいうと、以下の話もひょっとしたらその「補強」になるかもしれない。

 これが公開される前日の13日午前。コラムのタイミングをめぐり、自分が思い違いをしていることに気づいた。

 私は19日夜、がん患者としての日々について舞台で話すことになっている。番組出演で知り合ったお笑い芸人の村本大輔さん(ウーマンラッシュアワー)からのお誘いだ。

 連載を読んでいただいている皆様には、直前の回でお知らせするつもりでいた。だがなぜか、そのタイミングが今回ではなく、1週間後だと勘違いしていたのだ。

「先走って鳴き始めたセミを笑えない」。配偶者にスマートフォンでメッセージを送った。

 ちなみに舞台で与えられているのは10分間。緊張していなくても、終わるころには太ももが震えているに違いない。
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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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