学級通信や学校のサイトなどでは、子どもの表情がまったく見られない時代が到来するかも…(※写真はイメージ)
学級通信や学校のサイトなどでは、子どもの表情がまったく見られない時代が到来するかも…(※写真はイメージ)

 スナップ撮影愛好家にとって今や肖像権問題は喫緊の課題。とりわけ問題を面倒にしているのが、肖像権に対する無知と誤解だ。さらに事態をややこしくさせるのが個人情報保護法の改正である。といっても問題の本質は法の改正そのものにあるのではない。改正に伴う、萎縮ムードの高まりが懸念されるのだ。アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、改正個人情報保護法と肖像権問題を特集。「顔写真」の扱いが変わる?

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 個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)が全面施行されたのは2005年4月のこと。情報化社会が進み、プライバシー意識の高まりとともに、国際的にも個人情報保護法制定の動きがあったことが背景にある。

 だが、本来必要な情報まで共有できなくなるなどの過剰反応が社会問題となった。施行直後に発生したJR福知山線脱線事故では、負傷者の家族が病院に安否を問い合わせても、個人情報保護を理由に応じてもらえないケースが相次いだ。町内会や学校で連絡網を作れなくなったのも同様の理由だったとされている。

 そしてその個人情報保護法が大きく改正され、17年5月に全面施行された。最大の変更点は「取り扱う個人情報の数が5千以下である事業者を規制の対象外とする制度を廃止」というもの。個人情報を取り扱うすべての事業者が法規制の対象になったのだ。

 この「事業者」には非営利組織も該当するため、戸惑いが広がっている。教育現場もその一つだ。

 事実、小学校のPTA役員を務める都内勤務の男性は、「会合で改正個人情報保護法が議題になっている」と言う。学校が所有する保護者や子どもの個人情報が記載された名簿は、長年の慣習から本人の同意なしにPTAに提供されていたが、そのことが「不正の手段により個人情報を取得してはならない」という規定に抵触する恐れがあるからだ。

 男性はPTAで配布された資料の一文に目が留まった。個人情報の種類の一つに「顔写真」があったのだ。個人情報は「特定の個人を識別することができるもの」であり、「顔写真」もそれに該当する。「これでは人物の撮影自体が難しくなるのではないかと思ったんです」(先の男性)

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豆粒のような写真でもNG