「味覚が相当進化していたらしいんですよ、古代ローマ人は。魚醤があったということは、魚の出汁がわかっていたということじゃないですか。私の、現代日本人の味覚とどのくらい張り合えるのか、タイムマシンでトリップして確かめたいです! それに、砂糖が普及するのは1000年以上後ですし、香辛料はシルクロードで運ばれてくる貴重品でしたが、ローマ人はハチミツで甘味を出し、香辛料もけっこう使っていたらしいんです。パクチーさえ使っていたというので、パクチー好きの私にはたまりません。宮廷料理なんて、さぞや豪華だったと思うんですよ。当時の貴族は、とても豊かな生活をしていたはず。家の壁も、この大理石をピカピカに磨き上げていて、輝くばかりだっただろう……と、イタリアにごろごろしている遺跡を見るたびに、想像力がかきたてられます」

■対する日本は?

 イタリアみたいに石の家屋がずっと残っている所だと、『車だって新車じゃなく、中古をわざわざ選んで買う』、『他人の癖がついてきたものを、自分流にするのが面白い』。一方、日本は木の文化で、地震や火事などの災害のたびにリニューアルを余儀なくされています。「新しいもの」に軸足を置かざるをえません。日本の男性が若い女の子が好きなのは、そこに理由があるのかな(笑)」(ライター・砂崎良)

ヤマザキマリ(漫画家・随筆家)
1967年東京都出身。17歳で絵画の勉強のためイタリアに渡り、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で、油絵と美術史を専攻。'97年漫画家デビュー。『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。著書に『国境のない生き方』(小学館)、『男性論』(文春新書)、『スティーブ・ジョブズ』(講談社)、『プリニウス』(とり・みきと共作 新潮社)など多数。シリア、ポルトガル、米国を経て現在はイタリア在住。平成27年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。平成29年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。2018年春より新連載、古代ギリシャと日本のオリンピック比較文化論漫画『オリンピア・キュクロス』がスタート!