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アメフト騒動 現役の日大教授が語る「健全な肉体に健全な精神が宿る」は本当か?

連載「歴史上の人物を診る」

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早川智dot.#日大
23日、緊急会見で謝罪した日大アメフト部内田正人前監督、井上奨前コーチ(写真/福井しほ・AERAdot. 編集部)

23日、緊急会見で謝罪した日大アメフト部内田正人前監督、井上奨前コーチ(写真/福井しほ・AERAdot. 編集部)

『戦国武将を診る』(朝日新聞出版)などの著書をもつAERAdot.のコラムニスト、日本大学医学部・早川智教授が、同大のアメフト騒動を考察。メッセージを送る。

*  *  *
「健全な肉体に健全な精神が宿る」という言い回しは「身体を鍛えれば精神も健全となる」という意味でしばしば口にされるが、これは完全に誤用である。

 原文を当たると、“orandum est, ut sit mens sana in corpore sano”「健全な肉体に健全な精神が宿るように(願いたい)」(Decimus Junius Juvenalis, 60-130)『風刺詩集』第10編第356行)となっている。古代ローマの風刺詩人の願望にすぎず、「宿る」と断定はしていない。深読みすると、肉体は健全でも頭脳と行動に問題のある人間が古代ローマにも多かったということだろう。

 勤務先の大学が現在、火だるま状態だ。

 当該学生と大学側どちらの言い分が正しいのかは司法や第三者委員会の調査を待っている状態なので、これ以上、批判じみたことは言えないのだが、学生に比べて偉い人たちの歯切れが非常に悪いのが口惜しい。

 イギリスの歴史学者エリック・ホブズボームがいう長い19世紀が、第一次世界大戦の終了によってちょうど100年前に終わると、大衆化の20世紀が始まった。ドイツ皇帝ウイルヘルム2世の野望に始まる第一次大戦はロシア、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、トルコの4つの帝冠のみならず、フランス革命や米国独立を乗り越えて19世紀まで続いた貴族的な文化と騎士道を完全に葬り去り「大衆の時代」になった。

 筆者が敬愛する哲学者、ホセ・オルテガ・イ・ガセットは『大衆の反逆(1929)』の中で、大衆とは自らを良いとも悪いとも評価せず、他人と同様であることに苦痛を覚えず、むしろそのほうを良しとする人々としている。それに対する「高貴な人(精神的貴族)」とは自らより優れた存在を規範として自らを律し規範のために奉仕する人と定義した。同時に高貴さは権利ではなく、自らの要求に基づく義務であるともしている。


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