"主夫"というと、一般的には家計を担うのを妻の方に任せているようなイメージがある。実際に何かのメディアに出るたびにSNSでは「要はヒモだろ」とかそういう書き込みが見られる。でも、我が家の場合、稼ぎの面では僕の方が高い。そうすると今度は「じゃあ、主夫じゃないですよね?」と言われる。しかし、考えてみてほしい。女性の中にも夫より稼ぎがある人はいて、その人が家事育児をしていたら、それは"兼業主婦"と呼ばれるだろう。それと何の変わりもないはずだ。

 男性が家事育児に関わると、世の中にはまだ「男性は仕事、女性は家庭」という固定概念が強く残っていることを感じる機会が多い。乳幼児健診に娘を連れて行くと、受け付けで必ず「お母さんはどうしました?」と聞かれるし、保育園の行事でお弁当を食べるときに「おかあさんの作ったお弁当はおいしいですか?」と子どもたちに問う。(まあ、これは10年前の話で今はだいぶそういうことは減ってはいるけど)その象徴的な表現が「逆転夫婦」なのかもしれない。最初の頃は言うたびにちょっとモヤッとしていた。うちにとっては逆転でもなんでもないからである。

 こんなことを考えているのはきっと自分だけだろう。ところが意外なことに仲間がいたのだ。子育て番組で取材したことがきっかけで父親支援をしているNPO法人ファザーリングジャパンに入ると、そこに何人か「主夫」を名乗っている人たちがいて、話してみると、みんなほぼ同じような経験をしていたのだった。2014年、そんな主夫を名乗るメンバーたちで任意団体を作った。ちょうどその時、政府が「女性の管理職を3割に」という目的を掲げていたので「じゃあ、それを支える主夫も3割に」という悪ふざけ的な数値目標を掲げ、男性が家事育児をすることに対して、少しでも世間の目が和らいでくれたらという目的だ。考えを広めることが目的なら、コツコツ小さくではなくメディアにも取り上げてもらうことが重要だと思ったので、名前もできる限り目につきやすいものにした。そこで考えた名前が「秘密結社 主夫の友」である。

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「イクメンはバイト、主夫は社員」