一方、隠ぺいした場合、野党に追及され、マスコミの批判を受けるかもしれないが、国会では安倍1強の状況だし、メディアも親安倍と反安倍が拮抗している。安倍政権下では、国会で黒を白と言っても通るのをたびたび目にしてきた佐川氏から見れば、隠ぺいで逃げ切りという選択にかけた方が、まだ自分の出世の可能性が残ると考えたとしても、不思議ではない。現に、彼は、安倍政権を守ろうとした功績もあって、その後無事国税庁長官に昇格できた。ここまでは、佐川氏の狙った展開だった。

■佐川氏は本当に極悪人か?

 私の経験から言えば、佐川氏が隠ぺい路線を採ることを決めた時、前任の迫田氏に事実関係の確認と今後の方針についての相談を行った可能性が極めて高い。迫田氏はもちろん隠ぺい路線に賛成しただろうし、彼がそれを勧めた可能性も十分にある。

 また、佐川氏は、官房長や次官にも当然相談していると思う。なぜなら、安値販売について、佐川氏は全く責任がないので、次官などに相談するのにためらう必要はないからだ。さらに、次官に相談しておけば、いざというときに庇ってもらうことができるという計算もしたはずだ。

 その際、上に責任を押し付ける態度を取れば「無能」の烙印が押される文化があるということは前に述べたとおりだ。局長くらいの幹部クラスが次官に相談する時は、「次官、どうしましょうか」という白紙の相談はしない。それでは、責任を次官に丸々押し付けることになる。次官がのみやすい対応策を自分の側から提案するのが常識だ。おそらく、「すでに不当な安値販売をしてしまったので、それを認めれば財務省の責任を問われます。安倍総理夫妻のことを考えれば、どう考えても隠ぺいするしかありません」という提案を佐川氏側からしたと考えるのが自然だ。そして、「これは、私限りの判断で行います」と言えば最高の模範解答になる。次官は、「知らなかった」ことにできるからだ。

 ただし、それは表向きの話で、裏では、次官は極力佐川氏を守る義理があるということになる。やくざの世界と同じ構造だ。

次のページ
財務省は逃げ切りに成功するのか