横浜F・マリノスのポステコグルー監督(写真・Getty images)
横浜F・マリノスのポステコグルー監督(写真・Getty images)

 横浜F・マリノス(以下、横浜FM)は2018シーズンから元オーストラリア代表監督のアンジェ・ポステコグルーが新監督に就任し、開幕戦から展開しているサッカーが大きな注目を浴びている。

 “ポジショナルプレー"をベースとした、ピッチの横幅を広く使うパスワーク主体の攻撃が、イングランドのプレミアリーグでジョゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティーのスタイルに酷似しているのだ。

 左右のSBは、従来のサイドラインのアップダウンより、インサイドの中盤寄りに流れて組み立てに関わり、“ハーフスペース"と呼ばれる中央とアウトサイドの中間的なエリアに生じるスペースでチャンスの起点になる。そうした役割は“偽SB"とも呼ばれており、左SBの山中亮輔がC大阪との開幕戦で見事なミドルシュートを決めたことで話題性が高まった。

 そうしたスタイルに伴い、ボール保持率が大きく上がったこともあり、ポステコグルー監督が横浜FMに大きな変革をもたらしたように受け取っている人も多いかもしれない。ただ、この現象は唐突なものではなく、実はエリク・モンバエルツ前監督の時から仕込まれたものだ。つまり、前任者が種を撒き、水をやり続けた畑に新監督が進化のための肥料を加えたような流れだ。

 フランス人のモンバエルツ監督が横浜FMの監督として日本にやってきたのは2015年のこと。パリ・サンジェルマンやトゥールーズといったフランスのクラブを率いたのち、フランス代表のU-18とU-21代表を指導し、選手育成のパイオニアとして評価を定着させてきた。

 そのモンバエルツに白羽の矢を立てたのがマンチェスター・シティーを頂点とするシティー・フットボール・グループ(CFG)。UAEのアブダビ・ユナイテッド・グループを筆頭株主とするCFGは2014年に設立。プレミアリーグのマンチェスター・シティーをはじめ、米メジャーリーグサッカー(MLS)のニューヨーク・シティー、オーストラリアAリーグのメルボルン・シティーを傘下に持つ。2014年に日産自動車とグローバルパートナーシップを結び、横浜FMに経営参加している。

 その初年度にCFGのミッションを携えて横浜FMの監督に就任したモンバエルツは、日本のクラブに欧州スタンダードを植え付けるべく、チームの地盤をならすところから着手した。それまでの横浜FMは攻撃では中盤の選手にボールを集め、周りの選手が出し手のアイデアを共有して連動するのが基本スタイルだった。一方の守備では、ボールに対して縦を切りながら深めのポジションを取るため、DFラインが深くなる傾向が強かった。

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“単調な戦術”と揶揄されることも…