象徴的なのが左右のウィングが幅を取りながらボールを受け、そのインサイドに生じるスペースを中盤の選手や同サイドのSBが使ってチャンスを作っていく形だ。モンバエルツ監督の就任から3年目に入り、すでにディフェンスと、全体で押し上げていくビルドアップの基盤はでき上がりつつあった。そこにグアルディオラ監督の掲げる戦術を参考とした応用的なロジックを組み込んだ。

 そのため、モンバエルツは“メインテイン・ポジション"からさらに踏み込み、左サイドからのカットインを得意としていた右利きの齋藤学を右サイドに、左利きのマルティノスを左サイドで起用する試合を増やした。モンバエルツの攻撃はカウンタースタイルと呼ばれることがあったが、これは必ずしも適切とはいえない。

 組織として構築された守備から攻撃、攻撃から守備のトランジションにおいて、相手のディフェンスにそのまま付け入る隙やスペースが生じていれば効率的に突いていく。それが難しければ、組織としてのビジョンに基づき、全体を押し上げながらボールを広く動かし、相手ディフェンスのスペースを生み出す。その違いに過ぎないわけだ。

 ただ、モンバエルツが率いた3年間で大きな課題として残されたのが、まさにポジショナルプレーのコンセプトをベースに、ボールを動かして相手のディフェンスを崩していく攻撃のクオリティだった。その課題は、モンバエルツの横浜FMでの最終試合であり、C大阪に惜しくも敗れた天皇杯決勝でも改めて示された。

 ほぼ一貫して4-2-3-1が用いられたが、理想はマンチェスター・シティーと同じ4-1-4-1であることを帰国前に語ったモンバエルツ。その宿題が新監督のポステコグルーに託されたのだ。(文・河治良幸)

【後編】に続く※3月21日配信予定