1月27日に開催された出版記念講演会で語る長尾和宏医師
1月27日に開催された出版記念講演会で語る長尾和宏医師

 週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん』(朝日新聞出版)の出版記念講演会が1月27日、朝日新聞東京本社読者ホールで開催された。『「平穏死」10の条件』などの著者で、同ムックを監修した長尾和宏医師が、延命治療のやめどきや在宅医の探し方などについて語った。講演の一部をお届けする。

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 自分の最期は自分で決める、これがなかなか難しいんですね。

 国民の6割の人が自宅での最期を希望しているというデータがあります。しかし、現状、7割の人は医療機関で亡くなっているんです。願ってもかなわないのが現状です。

 どんな病気になって死を迎えるかはさまざまですが、いずれにしても終末期を通じて死に至るわけです。突然死や事故死などを除けは、がんか認知症、心不全や呼吸器不全などの臓器不全症か、どれかにあてはまり、終末期になって死に至ります。

 ただ終末期は年々、医学の発達とともにわかりにくくなっています。どこからが終末期なのかわからない、ということをまず知ってください。医者もよくわかっていないんです。

 がんの場合、抗がん剤が発達してきています。余命1か月で、もうだめだと言われても、新しい抗がん剤などが劇的に効いて、余命が数年延びるという人がいます。臓器不全症も、現代の医学で改善できるんですね。心不全でも入院して治療したらまた元気になる。何年も生き延びることもあります。認知症に関しては、どこから終末期かはよくわからない。

 だから私から提案したいのは、患者さんから「先生、私、もう終末期じゃないですか?」と、言いだしっぺになってみるということ。

 平穏死は、終末期以降は過剰な治療は控えて、緩和医療はしっかり受けて、あとにある自然な最期を迎えるということです。

 患者さんから言わないと、がんの場合、最期まで抗がん剤をうつことになる。本人がそれがよかったらいいと思いますが、私は家族に聞いてみたんです。「どうして死ぬまで抗がん剤をうつんですか?」と。そしたら「病院の先生が『もう来なくていい』って言ってくれなかったから、続けました」と言いました。病院の先生にも同じことを聞いたんです。そしたら「家族が連れてきたから、うちました」って。お互いお見合いっこしてるんですね。

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