ノブコブの徳井、ハライチの岩井、インパルスの板倉が「腐り芸人」と呼ばれる理由 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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ノブコブの徳井、ハライチの岩井、インパルスの板倉が「腐り芸人」と呼ばれる理由

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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ハライチの岩井勇気(左) (c)朝日新聞社

ハライチの岩井勇気(左) (c)朝日新聞社

 ただ、ここには奇妙なねじれがあることを忘れてはならない。バラエティ番組の「お約束」には馴染めないと語っている彼らは、バラエティ番組の『ゴッドタン』の中でそのことを率直に語って、笑いを生み出している。少なくともこの番組では、彼らはバラエティ番組のルールに従い、制作者の望む結果を出しているのだ。

 人としての腐り方がほかの2人よりも深刻に見える徳井でさえ、最近はその冷静な態度の裏にある燃えるような情熱と的確なコメント力が評価され、『内村てらすSEASON2』などに出演している。

 当たり前のことだが、「腐り芸人」という枠で番組に引っ張り出されている彼らは、文字通り腐っているわけではない。彼らは、お笑いに携わる誰もが密かに思っているけれど上手く言葉にできていない本音を口にして、共感の笑いを引き出すプロフェッショナルなのだ。

 最近放送された『ゴッドタン』の「腐り芸人セラピー」という企画の中では、腐り芸人の代表として呼ばれていた徳井が熱っぽく笑いを語っていたことから、「腐り芸人って実は熱い芸人なのではないか」という指摘が飛び出していた。

 無粋を承知で言わせてもらえば、私の知る限り、そもそも熱くない芸人などいない。芸人にとって笑いとは自身の「稼業」である。自分が選んだ仕事に対して真剣に向き合うのは当たり前のことだ。ただ、熱い芸人が「熱い」と揶揄されることがあるのは、笑いに対して熱い姿は人前で見せるものではない、という美意識が芸人の間にあるからだ。

 笑いは緊張を緩和することで生まれる。お笑いは見る側がリラックスした気分で見ることが重要だ。芸人が笑いに対して真剣であることを過剰にアピールするのは、見る人を緊張させ、笑いづらい状態へと追い込んでしまう。だから彼らは普段は意図的にそれを避けている。

 いわば、「腐り芸人」とは、芸人たちが内に秘めている「笑いへの高い理想」という普段は笑えないものをあえて笑いにする画期的な試みなのだ。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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