地元・名古屋の各テレビ局も、例年は1クルー、カメラ1台でキャンプの取材をフォローしてきたが、今年は2クルーを出す社が出てきたという。松坂の密着班と、松坂以外を追う別部隊に分けての取材が必要になったのだ。球団側も予想以上の松坂フィーバーに、当初は予定になかった専属広報をつけざるを得ない状況となり、ただでさえ例年の1.5倍近い報道陣が殺到しているキャンプ地で球団広報が松坂に“1人取られた”状況になり、てんてこ舞い状態だ。

 しかも、人が動けば、カネも動く。松坂のテスト入団が決まったのは、キャンプインを9日後に控えた1月23日。正式発表を受けてから営業や事業担当が急きょ、2種類のグッズを作成。時間的な問題がある中、松坂の名前入りタオル(税込み2000円)100枚を何とかキャンプインに間に合わせたが、これは初日で完売。「MATSUZAKA」のネームと背番号の「99」、番号の右隅にハイビスカスのイラストが添えられたキャンプ地限定の「サポーターズユニホーム」(同6000円)もキャンプ2日目で完売してしまった。

 しかも、松坂グッズの勢いに乗り、他の選手のグッズまでもが売れ、なんと第1クールの5日間で、去年のキャンプ中の1カ月間でのグッズ売上額に相当する約1000万円を超えてしまったというのだ。

 また、ファンからの要望が高まっているのが「レプリカユニホーム」だという。選手が着用するものと同じ生地のユニホームに、背中に「MATSUZAKA 99」のロゴを入れたものだが、この“本物バージョン”はそもそも準備可能な素材の数に限りがあり、松坂の入団決定が1月下旬だったとあって、メーカー側にもキャンプ初日に間に合わせるための準備ができていなかった。そこで現在、背番号なしのバージョンを松坂仕様に急きょ切り替える作業に取りかかっている真っ最中なのだという。

 そうしたフィーバーぶりにも、本人は泰然。2月3日の練習後には、松坂本人が「やりましょうか?」と球場外の一角に机を置き、臨時のサイン会を開催。しかも、当初の20分だった予定を10分延長するサービスぶりだった。松坂次第とはいえ、球団側は今後の不定期開催を想定。高木守道元監督が2012年からの2年間、北谷キャンプ中にファンサービスの一環として定期的にサイン会を行っていたときの警備のノウハウ、行列のさばき方などを熟知している球団職員を北谷に緊急出張させ、警備面などでの万全の対策を練る予定だという。

 これだけ周囲が盛り上がれば、選手たちにももちろん、その熱気や喧噪がダイレクトに伝わっている。

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中日は“松坂フィーバー”をどう生かす?