「フィレンツェはまるで美術館の中にいるかのような街でしたし、パリには世界一の人情と素晴らしい味がありました。何もしないで何日も過ごせる文化的な深みを感じたものです」

 実は日本の都市開発も、近年「文化とゆとり」を開発コンセプトに取り入れるようになっている。「代官山T-SITE」、六本木の「メルセデズ・ベンツコネクション」「渋谷ヒカリエ」など。斬新であるだけでなく、住む人、訪れる人が精神的に落ち着けることが、これからの都市づくりに必要な要素だ。

■五輪「後」は「個の時代」がさらに加速する

 都市デザインの難しさは、描いたデザインが実現するころには、10年、20年という長い時間が過ぎてしまうことだ。現在の価値観だけを反映したり、2~3年先のトレンドを読むくらいでは、出来上がったときに古さを感じるようになる。

 この変化の速い時代に、10年先、20年先の世の中がどうなっているのかを正確に描くことはほぼ不可能だ。だが大まかな時代の流れを予測したり、想像したりすることはできる。

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