■黒田が交代すればデフレに逆戻り?

 もう1つは、経済リスクである。

 市場は黒田続投を織り込みつつある。その象徴は円相場だ。民主党政権時代に1ドル=80円台だった円相場は110円台で安定しており、市場参加者は大きな金融政策の路線変更がないという前提で動いている。黒田が交代すれば、市場が方向感を失い、円高が進む可能性も否定できない。その場合、株価や輸入物価が下がり、デフレに逆戻りしてしまう恐れもある。

■国債購入はしばらく続き、財政再建は先送り

 黒田総裁が続投したとしても、日銀にはこの先、難題が待ち受けている。

 日銀は13年から国債を買い続け、保有残高は430兆円あまりに達している。これは、発行済みの国債全体の4割を占め、銀行や保険会社などの民間の金融機関の保有国債の合計を上回っている。当面は目標とする物価上昇率2%に届かない状況で、日銀の国債の大量購入はしばらく続くとみていいだろう。

 一方、安倍首相は衆院選で、消費税率の引き上げで得た税収増の使い道を変えると訴えた。
2019年10月に予定通り消費税率を10%へ引き上げる場合、税収増となる5兆円を、毎年の借金の増加を抑えるのではなく、「教育無償化」に使う。

 安倍首相は、年内に教育無償化を盛り込んだ2兆円規模の「政策パッケージ」をまとめる。この一方、2020年に基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化するという目標を先送りした。来年6月に新たな目標を策定するというが、財政健全化に向けた努力はみえてこない。

■デフレか、インフレか

 財政と金融緩和の拡大――。この状況で進むのは、財政政策と金融政策の「統合」である。

 国は借金をして、教育無償化などにお金をつぎ込み、日銀が通貨を増発してファイナンスする。まさに絵で描いたような「財政ファイナンス」といえよう。

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