その結末はどうなるのか? それは誰にもわからない。

 これほど財政赤字を抱えた状況で、「デフレ脱却」を目的に大規模な金融緩和を試した先進国は、ほかにないからだ。ある人は「いずれ通貨円が暴落する」といい、ある人は「いずれハイパーインフレが起きる」と予言する。しかし、「そんなことには絶対ならない。むしろデフレが続くのでは」という人もいる。

 いま、確実にいえるのは、現時点で安倍首相や黒田総裁が金融政策の効果として意図した「2%程度のマイルドなインフレ」にはなっていないし、ハイパーインフレのきざしもない、ということだ。私たち国民は今回の衆院選で、いまの安倍政権の経済政策(金融政策)にお墨付きを与えた。その結果、2%の目標が達成しない状況では、日銀には、国の借金の証文である国債が、「マグマ」のように蓄積し続けるということだ。

 これから、どうすべきか。5年に一度の日銀正副総裁人事のタイミングで、国会などで議論すべきことは山ほどある。将来がみえにくいときだからこそ、過去の歴史をひもとき、じっくり考えるべきときだろう。

鯨岡仁/朝日新聞記者。1976年、東京都生まれ。1999年、早稲田大学卒業、日本経済新聞社入社。2003年、朝日新聞社に移り、政治部記者として、首相官邸、防衛省、民主党などを担当。2008年、経済部記者になり、日本銀行担当としてリーマン・ショックを取材。社会保障と税の一体改革、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉、内閣府、財務省、自民党、首相官邸(2度目)、経済産業省などを担当。景気循環学会所属。2017年10月に、『日銀と政治 暗闘の20年史』(朝日新聞出版)を上梓