複数の色の素材を組み合わせて作った臓器モデル(写真提供:ストラタシス・ジャパン)
複数の色の素材を組み合わせて作った臓器モデル(写真提供:ストラタシス・ジャパン)
頭蓋骨の硬さまで再現し、手術をシミュレーションできる(写真提供:ストラタシス・ジャパン)
頭蓋骨の硬さまで再現し、手術をシミュレーションできる(写真提供:ストラタシス・ジャパン)
ストラタシス・ジャパンの3Dプリンター「Stratasys J750」(写真提供:ストラタシス・ジャパン)
ストラタシス・ジャパンの3Dプリンター「Stratasys J750」(写真提供:ストラタシス・ジャパン)

 医療分野のテクノロジーの進歩は目覚ましく、疾患の早期発見・治療、リハビリに大きく貢献することが期待されています。週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病いい病院」では、難度の高い手術の計画に有用な3Dプリンターを取材しました。

【画像】頭蓋骨の硬さまで再現!手術シミュレーション

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 3Dプリンターの進歩は目覚ましく、医療分野では欧米を中心に手術計画、研修医の教育、手術器具や装具の制作などに幅広く応用が進んでいます。最近では、米国ボストンの小児病院で重い心臓病をもつ少女の手術計画に3Dプリンターを用い、手術で健康を取り戻す様子がネット上に公開され、大きな反響を呼びました。

 3Dプリンターメーカーの国内法人であるストラタシス・ジャパンのマーケティングディレクター・吉澤文氏は、医療分野での有用性を次のように指摘します。

「国内で3Dプリンターを臨床・研究に使われている医師からは、手術計画における有用性を高く評価していただいています。難度の高い手術の前に3Dプリンターで作成した臓器モデルを用いて治療方針を検討することにより、従来であれば臓器を全摘していた症例についても病巣のみを短時間かつ効率的に切除することが可能となり、合併症や後遺症を最小限に抑えられる場合もあるそうです」

 近年、心臓の冠動脈バイパス術(CABG)では、心臓が動いたまま病変部の血管を患者自身の別の血管に置き換えるオフポンプCABGが主流となっています。また、脳腫瘍の手術の場合、血管や神経をいかに傷つけずに病巣だけを摘出するかが合併症や後遺症を最小限に抑える条件となります。

 最新鋭の3Dプリンターは、CTやMRIなどのデータをもとに実物大の立体的な臓器モデルを制作します。その積層は14ミクロンと微細で、毛細血管や微小な病変までリアルに再現できます。

 また、たとえば透明の樹脂で造形された臓器モデルのなかで、動脈を赤、静脈を青、神経をピンク、病巣を黄といったように鮮やかに色分けすることも可能です。硬質、軟質、ゴム状といった異なる素材を用い、骨や軟骨、臓器、血管、病巣などをそれぞれ実際に近い質感で再現することもできます。

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