ある日、娘が「大学を辞める」と言いだしました。理由を聞くと、医療系の道に進みたいと思っていたけれど、自分の祖母に優しい気持ちを持てない人間は、他人にも優しくできるはずがないというのです。もちろんそんなことはない、となだめましたが娘の決意は固く、大学を中退することに。娘は自分で決めたとはいえ、夢を諦めたことに深く傷ついていました。

 この一件でも母はまったく悪びれることなく、「あなたの育て方が悪かったからそうなった」の一点張り。もう許せません。私と娘の人生に土足で踏み込み、娘の夢を奪った人。離婚をしたとき実家に戻らず、娘と二人で頑張ればよかったと、悔やんでも悔やみきれません。

<専門家・前野マドカさん(幸福学)からのアドバイス>

 動物には、危険を察知すると相手を攻撃したり自身を防御したりする防衛本能が備わっています。人間も同じ。攻撃的な人に対しては、こちらも攻撃的になります。香織さんの場合、お母さんが攻撃的なのは事実です。だからこそ、こちらが「私は攻撃的じゃないよ、安全だよ」と示すことが大事なのです。「そんなことをしたら、お母さんはもっとやりたい放題になる!」と思うかもしれませんが、それは自分を信じていない証拠です。自分が変われば、相手が変わる。「私はこうしてほしい」「お母さんはなぜそう思うの?」など、会話ができるようになることで、「敵ではない」と思える関係になれるのです。

 お嬢さんには、この先いくらでも幸せな人生が待っています。香織さんとお母さんが良好な関係でいるところを、見せてあげてください。

まえの・まどか/慶應義塾大学大学院附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。幸せを広めるコンサルティングなどを行う。

(文/島田ゆかり)

※「ゆとりら秋冬号」から一部抜粋