多様な市民の参加は、政策的な厚みにもつながる。これまでなかなか代表されなかった市民の声が今後政策に取り込まれていくことになるだろうし、候補者自体を多様化していくことにも繋がるかもしれない。今の国会はジェンダーの観点からも、年齢層の観点からも偏りが大きい。政党を支える人が多様で、そして力を持っていけば、この状況も変えていけるはずだ。

 今回の選挙戦の何よりの財産は、より多くの市民が、民主主義の「観客」としてではなく、「プレイヤー」として政治に関わったことだと思う。「今の政治はダメだ」、「どこの政党にも期待できない」と言うのは簡単だ。でもそういうことを言っているうちは、政治が良くなることなどない。政治は政治家だけのものではない。紛れもなく私たち自身のものなのだ。私たちが変わらなければ、当然ながら政治も変わらない。

 選挙結果だけ見れば、現状では市民の力などそんなに大したものとは言えないのかもしれない。しかし民主主義は選挙結果が出たからと言って、終わるものではない。民主主義は様々なプロセスの積み重ねなのだ。今の状況に、次に何を接続できるのかが重要だ。そのように考え、地道に取り組むことが今まさに求められている。

 安倍政権は今後、自民党改憲草案に基づく憲法改正に向けて動くだろう。具体的にどの項目から着手するかはわからないが、いずれにしても改憲草案に通底しているのは、「公益及び公の秩序」を、私たちの尊厳や権利よりも重く見ているということだ。憲法改正が悪いとは言わない。しかしそもそも憲法を軽視する安倍政権の下で、自民党改憲草案に基づく憲法改正が行われるとすれば、それは何としても阻止すべきだ。そう考えた時、一番の武器になるのは私たちが主権者としての力を高めることだと思う。私たちの力で、立憲野党全体を押し上げることができるかどうか、あるいは憲法についての国民的な理解を広められるかどうか、憲法改正がどうなるかはこういった点にかかっていると思う。

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諏訪原健

諏訪原健

諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した

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