決算書に示された客観的な数値から原因を読み取れれば、問題を打破する有効な一手を打てる。それは経営者だけでなく、従業員であっても変わらない。仕事の成果が思うように出ず悩んでいる人は、個人ではなく“会社単位”で課題を考えることも必要だろう。

■いまの年収は多い? それとも少ない?

 ただし、いくら個人で頑張っても、会社の舵取りがダメなら意味はない。まして社員の努力が給料に還元されていないとしたら、仕事のモチベーションも上がらないというのが本音であろう。

 佐伯氏は、「現在の賃金水準が適正かどうかも、決算書からある程度推測できる」と言う。

「給与が多いか少ないかは、もちろん個人の能力次第というのが大前提ではあります。ただ、同じ業界内で他社と平均給与を比較するだけでも、自社の賃金水準を大まかに知ることができます。会社本体の平均給与は有価証券報告書にずばり載っていますし、グループ全体も人件費や従業員数から、誰でも簡単に計算できるものです」

「もし、給与が他社より低い場合、会社が得た利益をどれだけ従業員に還元しているかという『労働分配率』を見ましょう。自社の労働分配率が、他社に比べて低ければ、利益が出ている割には給与に還元されていないことがわかります。逆に高ければ、そもそも利益が少ないのです。」

 労働分配率とは、会社が生み出した「付加価値(売上高から原材料費や外注費などを差し引いた額)」に占める人件費の割合を示す数値だ。ここでは計算式の詳細は避けるが、経産省が発表した「平成28年企業活動基本調査速報」によると、製造業の労働分配率の平均値は47.8%、情報通信業は55.3%、小売業は49.2%、飲食サービス業は64.3%となっている。

 つまり、これらの数値と比べて自社の数値が低い場合、会社が得た利益を従業員に給与として還元する意識が、経営陣には乏しい可能性があるのだ。

■「3つの費用」から、会社の将来を占う

 佐伯氏は、そのほかに注目すべき項目として、「広告宣伝費」と「研究開発費」の2つを挙げる。

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