佐伯良隆(さえき・よしたか)/早稲田大学政治経済学部卒。ハーバード大学経営大学院修了(MBA)。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)にて企業向け融資業務に携わるほか、財務研修の企画および講師を務める。その後、米国投資顧問会社であるアライアンス・バーンスタインで株式投資のファンドマネジャーを務めるなど、金融の最前線で活躍。現在は、グロービス経営大学院教授。東京都金融広報委員会のアドバイザーとして、講演活動を行っている(撮影/写真部・片山奈緒子)
佐伯良隆(さえき・よしたか)/早稲田大学政治経済学部卒。ハーバード大学経営大学院修了(MBA)。日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)にて企業向け融資業務に携わるほか、財務研修の企画および講師を務める。その後、米国投資顧問会社であるアライアンス・バーンスタインで株式投資のファンドマネジャーを務めるなど、金融の最前線で活躍。現在は、グロービス経営大学院教授。東京都金融広報委員会のアドバイザーとして、講演活動を行っている(撮影/写真部・片山奈緒子)

 経営破綻したタカタや巨額損失が明らかとなった東芝など、大手であっても先行き不透明な企業が多い昨今。いち会社員として気になるのは、やはり「給料」だろう。いま勤めている会社の賃金水準は、はたして適正なのか? また今後、賃金が上がる可能性はあるのか……?

 そこで『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2018』の著者であり、グロービス経営大学院教授(ファイナンス担当)を務める佐伯良隆氏に、会社の経営状況や処遇が適正かどうか、決算書から客観的に読み解く方法をうかがった。

■決算書は、会社の「健康診断書」

「会社員の方であれば、毎年一回、必ず健康診断書を受け取りますよね。決算書というのは、要はその会社版。会社の体が成長しているか、病気になっていないか、運動機能に問題はないかなど、健康状態を知る上で必要なことがすべて書かれています」

 そもそも「決算」とは、「会社が一定期間に得た(あるいは失った)儲けや財産を計算して決定すること」をいう。それをまとめたものが決算書(財務諸表)であり、会社の「運動成績(1年間の事業活動で得た売上や利益)」と「健康状態(財産や現金の増減)」が一目でわかるようになっていると佐伯氏は語る。

「上場企業であれば開示の義務がありますから、公式サイトの『株主・投資家向け情報』に行けば、誰でも簡単に決算書を閲覧できます。従業員であれば、なおさら自社の決算書を読んで、会社の経営状態を把握しておくべきでしょう」

 佐伯氏は、決算書を読むことで、仕事に対する視野が広がり、個人の業務効率の改善にも役立つと指摘する。

「例えば、頑張って良い商品をつくっているはずなのに、なぜか売上が上がらないとします。その原因がどこにあるのか、目の前のタスクしか見ていない人にはわかりません。だから決算書を見るんです。例えば、広告宣伝費が減少していれば宣伝不足が理由として考えられるし、競合他社が好調なのに売上がダウンしているようであれば、商品の競争力が弱く市場でのシェアを落としている可能性があります」

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