第三の選択肢が、希望の党だ。その政策が30年ゼロということなので、とりあえず、民進党よりはましではある。同党が政権を取ってくれれば、原発ゼロ政策が具体化する可能性は高まる。

 しかし、当面の政策としては30年ゼロと30年代ゼロに大した違いはない。

 そこで、選挙後に、希望の党の脱原発派の議員と、合流できなかったリベラル系議員とが協力して、原発を止める法案を議員立法で提案することが考えられる。

 例えば、北朝鮮のミサイル危機が終わるまで全ての原発を止めることや使用済み核燃料プールの地下設置義務化などの緊急立法を提案する法案だ。政権をとれなくても、こうした提案をすれば、北朝鮮危機を煽る安倍政権を攻撃する有効な材料になるだろう。

 もちろん、そういう動きをしたときに希望の党の執行部から待ったがかかるかもしれない。その時は離党してリベラル系旧民進党議員と合流する手もある。政権与党になっていれば、まとまって離党されると、せっかく奪取した政権の崩壊につながるだけに、法案成立の可能性は高まる。

 民進党存続のままでも、戦えば落選の可能性が高かったリベラル系候補が小池氏人気で生き延びてくれれば、それだけ、脱原発議員の数が増える。リベラル系の有権者が、小池氏は信用しなくても、そこに望みを託して投票するというのも決しておかしなことではないだろう。

 また、共産党は希望の党候補のいる全選挙区に候補者を立てると言っているが、できれば、リベラル系で希望の党に合流した候補の選挙区では、対立候補を立てないという配慮をすれば、かなりのリベラル議員が残り、将来的な共産党との連携の目も残るかもしれない。

 今、リベラル系市民の中では、希望の党不信がかなり強い。それにはそれなりの根拠(とりわけ安保政策や改憲で安倍補完勢力になるという疑念)があり、とてもよく理解できる。したがって、希望の党の公認を得た元民進党候補の支援はできないというのもよくわかる。

 一方、テレビのワイドショー番組は、小池旋風を強めて視聴率を稼ぎたいという思惑で動いている。となれば、この勢いは続き、希望の党が大躍進する確率はかなり高い。そう考えると、希望の党に投票して、その中のリベラル系議員に頑張ってもらおうと考えるのも有力な選択肢だ……。

 と、正反対の二つの考えの間で心は揺れ動く。

 これから投票日までの約20日間、究極の選択を迫られるリベラル系市民は、最後まで悩みに悩んで運命の決断をしなければならない。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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