先制本塁打の中谷(左)をベンチ前で出迎える金本監督 (c)朝日新聞社
先制本塁打の中谷(左)をベンチ前で出迎える金本監督 (c)朝日新聞社

 金本知憲監督を迎えて2年目のシーズンとなった阪神タイガース。優勝争いでは残念ながら広島には及ばず、2位に終わる可能性が高いが、Bクラスに沈んだ昨年を上回る成績を残した。

 そして何より大きいのがチームの世代交代が一気に進んだことである。そこでこの2年間で阪神がどこまで大きく変化したかということと、来季以降優勝を狙うためのポイントについて整理する。

 金本監督がまず推し進めたのが将来を見据えた若手選手の抜擢である。昨年はルーキーの高山俊とプロ入りから3年間で1打席しか出場のなかった北條史也をレギュラーとして起用し、高山は新人王、北條も105安打(以下、数字は9月16日現在)を放つ活躍を見せた。そして今年はプロ入り7年目の中谷将大がここまでチームトップの19本塁打を放つなど完全に中軸へと成長を遂げた。

 金本監督の凄いところは、優勝争いをしていても抜擢の勢いを緩めないところである。まだ逆転優勝の可能性が残されていた8月に2年目の坂本誠志郎を正捕手に抜擢し、9月1日にはルーキーの大山悠輔を4番に起用したことはその象徴的な出来事と言えるだろう。そして一度起用した選手を数試合ですぐに判断するのではなく、ある程度起用し続けるところに本気でチームを改革しようという気概を感じる。

 ドラフト2位ルーキーの小野泰己はデビューから12試合勝ち星がつかず7連敗を喫していたが、それでも先発で起用し続けると、8月29日にプロ初勝利をマークした。以前の阪神ならここまで我慢することはなかっただろう。ちなみに大山は昨年のドラフトで金本監督の強い意向で即戦力が期待できる投手の指名を見送って単独指名した選手であり、ドラフト会議終了後はその指名を疑問視する意見も多く聞かれたが、ここまでの活躍によってその声も完全に過去のものとなっている。

 またドラフト5位ルーキーの糸原健斗も故障で離脱するまではショートのレギュラーとして活躍を見せていた。若手、ルーキーの抜擢が一過性のものではないことがよくわかるだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ