■マイナス金利で追い込まれ「ゲタ」をはいて融資攻勢

 まず、銀行がカードローンを増やした要因としては、日銀の金融超緩和が挙げられる。日銀の政策で金利が低く抑えられ、利ザヤも縮小。金余りで優良企業は借金をしないし、住宅ローンも利ザヤは小さいまま。さらにマイナス金利政策の導入が追い打ちをかけた。

 そんな銀行にとって、10%以上の金利が取れる消費者ローンは魅力的だ。カードローン拡大に力が入り、現場の行員にはカードローン拡大のプレッシャーがかかった。
筆者も、窓口でカードローンなど不要だと言っても、「使わなくても作るだけでいいですから」などと食い下がられた経験がある。

 広告宣伝も過熱し、「総量規制の対象外」「年収証明書不要」最短30分審査」などという過剰広告が氾濫した。

 さらに、競争相手のサラ金業者に前述のように、「総量規制」で年収の3分の1超の貸し付けが禁じられる一方で、貸金業者でない銀行にはこの規制は適用されなかったため、サラ金に代わって無制限にカードローン残高を伸ばせる余地が生まれた。いわば、「ゲタ」をはいて競争させてもらったのである。その結果、カードローン残高は急上昇したのである。

■銀行カードローンはサラ金融資の衣替え

 しかし、ノウハウのない銀行がどうやってそこまで急激に残高を伸ばすことができたのだろうか。そこには、コロンブスの卵のような答えがあった。

 まず、銀行は「総量規制」で経営が傾いたサラ金会社を買収して子会社化したり業務提携契約を結んだりした。その上で、そのサラ金業者が与信審査を行い、貸し倒れの際には債務者に代わって銀行に弁済する保証業務をやり、貸金の取り立てはその保証会社傘下のサービサー(債権回収会社)に丸投げするということにした。

 銀行は高い利ザヤを稼ぎながら、リスクと面倒な業務は全てサラ金に移転する仕組みだ。一方、貸金業者にとっては総量規制で自分では貸せない相手でも、銀行が貸せば許される。金利のうちの何%かは保証料としてもらえるからおいしい仕事だ。これが苦境に陥った貸金業者の生き残り策になった。

 要するに、銀行の名前を使ってサラ金ビジネスをやっている、あるいは、銀行がサラ金になっただけと言ってもよい状況だ。

 例えば、三菱東京UFJ銀行とそのグループ企業アコム、三井住友銀行と同じくSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)と、銀行サラ金一体の貸金事業の展開である。このモデルは全国の地域金融機関に広がっている。

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