■1年後、麗華さんのモノローグ

 スタイリングが終わって家についた直後は、なんだかまだフワフワした気持ちでした。たった6時間で全く違う人になったような気がして、でも家のクローゼットを覗くとフリフリの服ばかりで(笑)。買って帰った服だけが唯一、「夢じゃなかったんだ」って思わせてくれました。

 自分でこうなりたいっていう理想像が見えて、そしてそれに近づけたことは本当に良かったです。これからこのクラシカルな服が自分を導いてくれる、この服に恥じない自分にならなきゃ、と思いました。それで、何か自分でも大きく変えたいと思って、髪を黒くしてショートボブにしてみたんです。

 実は後日、いつも行ってるゴルフサークルに、今回買った服を着ていったんです。そしたら、いつものメンバーの反応が全然違って驚きました。

「そういう髪形に今の服のほうが大人っぽくてずっといいよ。正直言って、前の服は、軽そうに見えていたから」

 と褒められたんです。今までの服も「かわいい」って言われていたけれど、しぎはらさんがおっしゃったように、やっぱり軽く見られてたんだなと思ってちょっと恥ずかしくなりました。

 それと、声をかけられる回数が減りました(笑)。でも、合コンで今まで声をかけてきた男性たちとは違う、もっと堅いタイプの男性からも話しかけられるようになって。話す内容も違うんですよね。だから、あからさまなナンパ目的がなくなって、もっと自然な感じで仲良くなることが多くなりました。

 そして……、ここは正直に告白しますが、不倫はすぐにはやめられませんでした。何度も頑張ったけど、相手にも引き止められて、ずるずるしちゃって。でも、決意して、半年後に携帯番号まで変えて、ようやく別れました。これはきつかったです。私にとっては初めて、彼のいない生活に耐え続けています。だってやっぱり自分一人を選んでくれる人といたいし、そういう男性を自分で選びたいから。

 最近、ちょっと気になる男性がいるんです。読書会サークルで出会った人でちょっとオタクっぽいんですけど、話がすごく面白くて。何を考えているんだろう、どんな人なんだろうと、もっと彼のことが知りたいと思っているので、今度自分からご飯に誘ってみたいと思っています。

「私には意思がある」。そうやってしっかり前を向いて今度こそ自分を大切に思ってくれる男性と付き合うって、心に決めています。

■しぎはらひろ子のプラチナエール

 私は、麗華さんのお話を聞きながら、「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった」から始まる、婦人解放運動の宣言として、平塚らいてうが発行した文芸雑誌「青鞜」に掲載されたある一文を思い起こしていました。

 そこに綴られていたのは、

「今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のやうな蒼白い顔の月である」

 という、女性の自由な生き方を軽視した社会状況への反発。そして女性の政治的・社会的自由確立を手にしようという、らいてうから女性たちへの熱い呼びかけでした。

 まさに今、この一文を麗華さんへ贈りたいと思いました。

 自らの力で自立しない限りなんとなく周りと同じようにすれば安心、自分で決めるのは怖いからと、誰かの力にゆだね何も決められないでいると、その先の道を不意に断たれてしまうこともあるのです。昔の女の人はそれに甘んじていたかもしれません。でも、今は女性にもたくさん道が開かれているし、選択できる環境も整っています。人にすべてを決められるという人生を我慢して送る必要はないのです。

 まずは自分の意思で決めてほしい、私は麗華さんに対して強くそう思いました。少しずつでもそういった積み重ねをしていくことで、「私が選んだことは良かったんだ」という成功体験を得られるはずですし、自らの人生を切り開いていく大きなチカラにつながっていくと思うのです。

 今回私は、麗華さんに対して比較的強い色の服を選びました。スタイリング中、それまでのぼんやりした雰囲気に「フッ」とチカラが入った瞬間が何度かありました。そして後日、麗華さんの送ってくれたショートボブに変身した写真には、彼女のゆるぎない決意が表れていました。この強い気持ちを忘れずに、ぜひ自分の意思を持ってしっかりと歩いていってほしいと願っています。

 自らの人生は自らの意思で掴み取る。それがどんな人生であっても、自分で決めたことなら後悔しないはずです。恨みつらみが残るのだとしたら、それは誰かに与えられたものだから。

 らいてうが呼びかけたように、皆さんも女性は自らの力で輝くことのできる太陽なのだと信じて心から「幸せ!」と言える人生のために、突き進んでください。

(編集/内山美加子、編集協力/河辺さや香)