麗華さん:はい、わかります……。確かにそうかもしれないですね。でも、寂しくて踏ん切りがつかない場合はどうしたらいいんでしょう? 別れることが自分を変えるきっかけになることはわかるんですが、それがどうしてもできないんです。

しぎはら:それなら、せっかく私のところに来たんだから、まずは洋服を変えてみたらどう? 麗華さんがなりたい、つまり決断力のある女性に近づくことから始めるの。

麗華さん:はい。でも、どういうふうに変えればいいんでしょうか?

しぎはら:そういう時は、理想の姿を想像するんです。モデリングっていうんですけど、“こんな女性になりたい”っていう、理想の女優さんを挙げていただいて、そのなかの素敵なところをミックスして自分を近づけていくんです。好きな女優さん、ヒアリングシートにも書いてくれたわよね。

麗華さん:そうですね~、えーっと、菅野美穂さんが好きです。自分を持っていながら、好きな人と結婚して、家庭を持って、子どもも産んで、ちゃんと旦那さんに大切にされている感じが羨ましい。誠実な人とちゃんと結婚してるっていうのがいいと思います。親しみやすそうなところも憧れですね。

しぎはら:そうね、菅野美穂さんはかわいらしいけれどしっかり者、きちんと家庭を守っている雰囲気よね。他には?

麗華さん:あとは優香さん。ずっと独身でいるのかなって思ったけど、最近いい結婚をしたので、ああいう女性にも憧れますね。大人の女性の雰囲気もある。お相手も俳優として評価されているし、できる男に愛されてるっていうところもいいなって。

しぎはら:菅野美穂さん、優香さんも、一見すごく優しそうな雰囲気。でも彼女たちには強い意思があるはず。つまり、優しさの裏側って強さが潜んでると思うんです。今の麗華さんの場合、ふわふわっとしている雰囲気は、残念ながら優しさじゃなくて優柔不断の印象を人に与えてしまう。この違いってわかります?

麗華さん:うーん、そうですね。やっぱり決めるのが苦手だから……。

しぎはら:これから菅野美穂さんや優香さんのイメージでメイクをして洋服を買いに行きますが、決めるのが苦手っていうことであれば、今日私が用意する服を、なるべくたくさん着てもらいたいんです。私はこれがいいって言わないので、自分がイメージする女性として「これが着たい!」っていう視点を持って試着をしてほしいの。

麗華さん:自分がいいって思うものを選ぶんですか? それだといつもと同じになってしまいそうなんですけど。

しぎはら:大丈夫、選択肢はご用意するわ。あのね、今日はおそらく“しぎはらさんに服を選んでもらう”っていうつもりで来たと思うんだけど、私、今日は最初からこれっていうコーディネートを決めません。それよりも、麗華さんがこうなりたいって思う女性になるために手助けをします。だから自分がこれだって思う服を、まずは自分の意思で決めてみる。それを今日やってみましょうよ。

麗華さん:はい、洋服で自分が変われるのならぜひトライしたいです。よろしくお願いします。

■「選べる女」の決意メイク

 具体的にスタイリングに入る前にメイクをするのはいつものとおりですが、今回は特にこのメイクに、麗華さんを目覚めさせるパワーを借りたいと考えました。テーマはズバリ“意思”。そこで口紅は、決意を感じさせる深紅を選びました。

 ココ・シャネルやマリリン・モンロー、マドンナなど、過去に革命を起こしたような女性は、いつも赤いルージュを引いていたのをご存じでしょうか? 強い意思で過去を生き抜いた優雅な女性たちの口元はいつも赤い口紅だったのです。

「口紅で挑みなさい」

 とは、シャネルの名言のひとつ。窮屈なコルセットから女性を解放し、ファッションに革命を起こしたシャネルが選び抜いた深紅の口紅は、逆境にあっても自分のスタイルを貫いた女の、意思を表す色でもあったのです。

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