なにより、守備の安定が攻撃の車輪を回している。新戦力CBヨニッチは、前半戦ベストイレブンに値する出来。読みが良く、コンタクトにも強く、ゴールに鍵を掛けられる。GKキム・ジンヒョンは潮目を変えられる。押し込まれたところで一発を防ぐことで、流れを自分たちのものにできる(柏の中村航輔、川崎のチョン・ソンリョン、鹿島のクォン・スンテなど上位チームは例外なく好GKを擁する)。

 下位では、ヴァンフォーレ甲府の健闘は瞠目に値するだろう。限られた戦力ではあるが、吉田達磨監督のプレーモデルが浸透。ボールを握る強度が確実に増した。エデル・リマは左利きDFとして活躍、目覚ましい。また、大宮アルディージャも勇敢にボールを運べるチームと言える。1トップの江坂任は、抜群のプレーセンスを感じさせる。守備面の穴があることは否めないが、フットボールをするチームだ。

 ともあれ、一進一退の攻防が続くのは間違いない。今の順位が、終了段階ではかなり変動している可能性もある。かつてない群雄割拠。はたして、真の強者は生まれるのか?

小宮良之
1972年生まれ。スポーツライター。01~06年までバルセロナを拠点に活動、帰国後は戦うアスリートの実像に迫る。代表作に「導かれし者」(角川文庫)、「アンチ・ドロップアウト」3部作(集英社)、「おれは最後に笑う」(東邦出版)など。3月下旬に「選ばれし者への挑戦状」(東邦出版)を刊行