今や国民病となりつつある不眠。寝付けない、夜中に何度も目が覚める……といった悩みを抱えている人も多いことだろう。最新の研究から、入浴の時間や入り方で、睡眠の質も左右されるということがわかってきた。寝付きもよく、朝までぐっすり熟睡するためには、どのような入浴法がいいのか。女性向け健康・ライフスタイル誌『ゆとりら 夏号』の特集「ぐっすり朝まで眠りたい」で、スタンフォード大医学部教授の西野精治氏に取材した。
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「上手に『入眠スイッチ』を活用すれば、子どものようにスッと眠りにつけます。そのスイッチのひとつが体温です」
と話すのは『スタンフォード式最高の睡眠』の著者、スタンフォード大学の西野精治教授。「女性は家事や育児に割かれる時間が多く、高齢になるほど夫より先に起きて朝食を作るといった伝統的価値観にしばられて睡眠時間が不足しがち。睡眠時間を増やすのが理想ではありますが、寝る前の体温をコントロールして睡眠の質を高めれば、昼間のパフォーマンスを上げることができます」
■入浴による体温の上げ下げで「入眠スイッチ」がオン
入眠スイッチとなるのは、体の中の温度である「深部体温」と、手足表面の「皮膚温度」の差を縮めておくこと。起きているときは通常、深部体温のほうが皮膚温度より2度ほど高くなっているが、入眠時に深部体温が下がることで入眠モードに切り替わる。「『赤ちゃんの手足が温かいのは眠い証拠』といわれるが、これは手足から熱を放散して深部体温を下げているのです。大人も同じように手足から熱放散がおこり、深部体温を下げると入眠しやすくなります」(西野教授)
この入眠スイッチを入れるのに有効なのが入浴だ。深部体温を下げるには、いったん体を温めるのが効果的。体温が上がるとその後下げようとする力が働いて深部体温が急降下し、スムーズな入眠につながる。
「40度のお風呂に15分入ると深部体温が0.5度上昇し、90分かけて元に戻ります。そして、ここから、入浴しない場合に比べてさらに下がり始めるので、このタイミングでベッドに入るとスムーズに入眠できます」(同)