そして、「2017年度待機児童ゼロ」という最も期待された公約も、当然のことのように3年間延期された。今この問題に直面している子育て世代にとっては、結局解決策のないまま幼児期の子育てを終えるという「手遅れ状態」になるのだが、それに対する謝罪は形ばかりのものでしかない。

 そして、防衛費や公共事業予算などはほとんど何の議論もせずに大幅に増加させているが、子育て予算では、なぜかいつも財源論が立ちはだかる。

 子育てのための保険だとか国債だとか議論するが、いずれも単に国民の負担を反発の少ない形でそっと導入しようというだけの話だ。

 他の予算を削るという話は全く出てこない。それは、女性のための予算を他よりも優先しようという発想がないからである。

●後藤健二夫人を見捨てた安倍政権

 ここまで経済的な問題を中心に述べたが、私が、安倍政権が女性に冷たい政権だという確信を持ったのは、後藤健二さん殺害事件の時である。

 安倍総理は、2014年11月に後藤健二さんがISに拉致されたということを知りながら、わざわざ「敵地」中東を2015年1月に訪問した。こんな危ないことは、尋常な感覚の持ち主ならしなかったであろう。

 その時、後藤健二さんのご夫人は、必死に後藤さんを取り戻すための身代金交渉をISとの間で行っていた。そんなときに、中東、しかもよりによってアラブの敵イスラエルを訪問し、さらにエジプトで、「ISILと闘う周辺各国に総額2億ドル程度の支援を約束する」といういわば、ISへの宣戦布告を行ったのである。

 その直後にISは後藤さんの映像を公開し、安倍総理の言葉を強く非難したのだ。

 そして、最終的には、後藤さんは還らぬ人となった。

 この間、官邸は、後藤夫人の身代金交渉を一切支援しないように外務省に厳命していたそうである。他の西側諸国では、表の建前にかかわらず、次々とISから身代金と引き換えに人質を取り返したというニュースが報じられていたのに、安倍政権は米国に認められたいという思いで、後藤さんを見殺しにさせたのであろう。

 私は、後藤夫人が、安倍総理が中東を訪問すると知った時の気持ちを想像した。そして、エジプトでのスピーチを聞いた時の驚きと悲しみと、そして、憤りを思った。

 安倍晋三という人の非人間性を思い知らされた気がした。

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