厚労省発表の「医師不足解消」 現役医師が指摘する重大な見落とし (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

厚労省発表の「医師不足解消」 現役医師が指摘する重大な見落とし

このエントリーをはてなブックマークに追加
【図1】75歳以上人口1000人あたりの60歳未満の医師数の推移(『病院は東京から破綻する』より)

【図1】75歳以上人口1000人あたりの60歳未満の医師数の推移(『病院は東京から破綻する』より)

【図2】性別、年齢別の病院勤務医師の労働時間(『病院は東京から破綻する』より)

【図2】性別、年齢別の病院勤務医師の労働時間(『病院は東京から破綻する』より)

【図3】2010年と2035年の医師数の内訳(『病院は東京から破綻する』より)

【図3】2010年と2035年の医師数の内訳(『病院は東京から破綻する』より)

 首都圏の医療システムは急速に崩壊しつつある。それには、患者だけではなく医師の高齢化も影響している――。現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、「老老医療がやってくる」と指摘している。

【他の図版はこちら】

*  *  *
 迫りくる病院破綻のポイントは、団塊世代の高齢化です。

 団塊世代とは、第二次世界大戦直後の1947年から49年にかけて生まれた人々を指し、この3年間の年間出生数は260万人を超え、合計約806万人もいます。

 団塊世代は高度成長期に製造業などの労働力として、地方から首都圏や関西圏などの大都市圏に移住しました。移住先の都市で生活基盤を築き、永住している人が多いと言われています。首都圏の団塊世代人口は約180万人と推定されています。

 この団塊世代が2012年には65歳、22年には75歳を超え、医療需要が急増するとみられています。これが医師不足にどのような影響を与えるのか、我々の研究結果をご紹介しましょう。

【図1】は首都圏の75歳以上人口1000人あたりの60歳未満の医師数の推移についてシミュレーションしたもので、情報工学を専門とする井元清哉教授(東大医科研)との共同研究です。

 図の通り、首都圏の全ての県で、医師不足は、少なくとも今後35年間は悪化し続けます。団塊世代の多くが亡くなる35年頃に一時的に状況は改善しますが、その後団塊ジュニア世代が高齢化するため、再び医療ニーズは高まります。多くの県で、50年には75歳以上の人口1000人あたりの60歳未満の医師数は、現在の3分の2程度になります。

 その頃の東京の医師不足の状況は、10年当時の千葉県や埼玉県とほぼ同じです。両県では医師不足によって閉院する病院が相次ぎ、急患の受け入れが難しいため、救急車のたらい回しが発生しやすい状況になっています。

 ところが、厚労省は、15年7月に、日本の人口10万人あたりの医師数が10年後には経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を上回るという推計をまとめ、医師不足が解消されるという見通しを発表しました。

 これは、私たちの研究成果とは正反対です。厚労省の推計には重大な見落としがあります。我々の推計では国民と医師の高齢化を想定していますが、厚労省の推計は想定していないのです。国民は高齢化するほど病気に罹りやすくなり、医師は高齢化するほど働けなくなります。人口と医師数を単に比較するだけでは、将来の見通しは立ちません。


トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい