日本で唯一の不登校・ひきこもり専門紙「不登校新聞」編集長、石井志昂さんがつづる連載「ぶらり不登校」。自身も不登校の経験がある石井さんは、就職活動が本格的にスタートするこの時期に、ある人の言葉を思い出すそうです。
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6月は就職活動が本格的に始まるシーズンです。そろそろ学校では、早々に内定が出た学生とそうではない学生に“明暗”が分かれてくるころでしょう。実は、就活に悩んで追い詰められる人はとても多いのです。
警察庁が今年発表した自殺の統計によれば2016年に「就職の失敗」を理由(複数に該当することもある)に自殺した大学生は1年間で27人もいました。うつや学業不振などに続き、4番目に多い理由です。そして、そのうち23人は男性でした。
過去10年間の統計を見ると「就職の失敗」を理由にした大学生の自殺は2010年の46人がピーク。その後は少しずつ減少し2015年には17人まで減りましたが、昨年は4年ぶりに増加に転じて27人でした。「売り手市場」と言われている時期なのに、ここ5年間だけでも合計144人の大学生が命を落としている。この現状は、決して楽観視できないと思います。
就活で苦労してひきこもったという人も、私のまわりにいます。ある友人は、度重なる就活の失敗で「人生すべてを否定された」と感じ、しばらく食事を取ることもお風呂に入ることもできなくなりました。
身動きが取れなくなるという経験は私にもあります。中学2年生のとき、いじめ、勉強のストレス、教師の理不尽な指導などが重なり、不登校になったときのことです。同時に、さまざまなことを悩み始めました。
このままじゃ勉強が遅れてしまう。
学校にも行けない自分に将来なんてあるんだろうか。
どうやったら大人になれるのだろうか。
悩みだけが募って世の中から取り残されていく感覚。「せめて勉強だけは」と教科書を開いても何も手につかない。そうなると、自分の身になにが起きているのかわからなくなり、ネガティブな感情だけにどんどん包まれていきます。