全仏オープンに臨む錦織圭。(写真:Getty Images)
全仏オープンに臨む錦織圭。(写真:Getty Images)

「物足りない」

 先週のローマ・マスターズでホアンマルティン・デルポトロに敗れた時、錦織圭はそう言った。

 このローマ大会で錦織が戦った試合数は、2。その前週のマドリード・マスターズでは準々決勝まで勝ち上がるも、手首のケガのため棄権したので、こちらも戦ったのは2試合のみだった。

 来たる全仏オープンに向け、ローマ大会後は練習で課題克服に取り組むのが、当初の予定だったはずだ。だが3回戦敗退の時点で錦織が何にも増して欲したのは、実戦でしか取り戻せぬ試合勘と、勝利に付随して得られる自信だった。敗戦の数時間後に急きょジュネーブ・オープン出場を決めた錦織は、ローマからパリの中間地点に当たる湖畔の町で3試合の実戦を積み、全仏の舞台「ローラン・ギャロス」へと乗り込んできた。

 グランドスラム前のスケジュールの組み方は、10年のツアー転戦を重ねてきた錦織たちにしても、未だに頭を悩ませる問題だ。錦織がグランドスラム前週の大会に出た最後のケースは、2011年の全米オープン時のこと。とはいえ当時の錦織のランキングは50位前後で、今とは状況が大きく異なる。ちなみにこの年の全米では、錦織は初戦を途中でリタイア。「グランドスラムの前の週は休むのが理想」と悟ったこの時の教訓があり、以降は今回の全仏以外、グランドスラムの前週は全て調整に充ててきた。

 「グランドスラムの前は、思い切って休んだ方が良いのかと思ったこともあった」のは、決勝に勝ち上がった2014年の全米前に、足の裏に出来た“胞のう”除去のため3週間以上実戦から遠ざかった過去があるからだ。しかし翌年の全米では、2週間の休養を取り万全の状態で挑んだにも関わらず、初戦でよもやの敗戦を喫する。

 ちなみに、ベスト4に勝ち進んだ昨年の全米では、大会前週こそ休んだものの、その前はカナダから五輪出場のためにブラジルのリオへと飛び、最終日まで戦ったその足で北米に戻ってシンシナティ・マスターズに出るという、最も過酷な夏を過ごしていた。

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