そして(3)CO2を排出しない原発なしには、温室効果ガスを削減できないという主張も、今回の環境省の最新データによって、覆されたのである。

 なにしろ原発をほとんど停め、CO2を多く出す火力発電をメインにして、日本の潜在成長力を超える1.3%の経済成長をしても、CO2の排出量が大幅に減ってしまったのだ。

 その要因は工場、オフィス、家庭などで省エネが大幅に進むとともに自然エネの普及も進んだためだ。省エネは一度進んだら後退することはない。なぜなら、その方が、企業も消費者も得するからだ。そして、原発のコストは規制の強化が続き、今後も上昇し続けると見込まれる。一方、自然エネルギーのコスト低下は今後も続くから、もう原発が安いという時代が戻ってくることはない。

 つまり、エネルギー構造が根本から変わってしまったということだ。

 これは安倍政権や原子力ムラにとって、絶対に認めたくない「不都合な真実」だ。このニュースについて報道量が少ないのは、そのためなのだろう。

 北朝鮮のミサイル騒動と原発再稼働のニュース、経済成長しても温室効果ガスが減ったというニュース。このふたつのニュースから導ける結論は、安倍政権が絶対にやりたくないこと。すなわち、「すべての原発再稼働をやめて、速やかに廃炉にする」ことである。

 そして、もう一つ、指摘しておかなければならない大事なこと……そう、それは、日本のテレビ局や大手全国紙の多くが本来の機能を停止し、しかも、自らそれに気づく能力を失ってしまったことだ。

 これこそ、朝鮮半島危機を超える、まさに、「本当の危機」というべきではないのか。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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