「五月病」的な概念が存在しない国も少なくない (※写真はイメージ)
「五月病」的な概念が存在しない国も少なくない (※写真はイメージ)

 5月も中旬を迎え、そろそろ五月病を訴える人が増え始める頃合いだ。
 新年度の4月に環境が変わり、何かと気苦労の多い1カ月間を過ごし、5月の連休が明けた頃からその疲れが出てしまう――。国民病とされるこの病気、実は社会の仕組みに起因する日本独自の病のようだ。東京女子医科大学病院の稲田健医師が解説する。

「精神医学用語には、五月病というものはありません。精神医学の診断に当てはめるのであれば、適応障害ということになります。新しい環境に順化しようとして頑張り、ちょっと頑張りすぎで疲れてしまったような状態です」

 ならば、海外にも五月病のような病はあるのだろうか。独自調査してみた。

■韓国は3月に五月病?

 お隣の国・韓国では、3月頃に五月病に似た症状に苛まれる人々が見られる。日本在住の韓国人女性(40代)は語る。

「春困症(チュンゴンチュン)という病気で、イライラしたり、ダルくてやる気が出なかったり、お腹の調子を崩したりします。韓国では3月が新年度の始まりで、生活の環境が変わったストレスが原因ともいわれます。その点、日本の五月病と似ているかもしれません」

 五月病と異なるのは、新陳代謝機能の変化も原因のひとつとして挙げられる点だ。新陳代謝機能は冬の間は低下しているが、春になり、気温が上がるにつれて活発になっていくという。その際、生理的に不安定な状態になり、疲労感を覚えると解説される。

 アメリカには五月病に似た症状として、冬休み休暇明けの1月に「January blues」、夏休み明けに「September blues」がある。「Blue Monday」(憂鬱[ゆううつ]な月曜日)という言葉の通り、英語で「Blue(青)」は憂鬱な精神状態のことだ。アメリカ在住21年のジャーナリスト・新垣謙太郎氏が解説する。

「多くのアメリカ人は家族と共にクリスマスを過ごして、お正月を友だちなどとパーティーをして迎えるので、1月の仕事始めや新学期を迎える際に憂鬱になる事が多いようです。特にアメリカらしいのが、12月に購入したクリスマスプレゼントのクレジットカード精算を1月中旬にしなければならないので、経済的理由から憂鬱になる人も多くいること」

次のページ