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古賀茂明「電通事件でわかる労基法のザルぶり 連合は“経団連労務部”」

連載「政官財の罪と罰」

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著者:古賀茂明(こが・しげあき)1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。主著「日本中枢の崩壊」など。「シナプス 古賀茂明サロン」主催。

著者:古賀茂明(こが・しげあき)
1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。主著「日本中枢の崩壊」など。「シナプス 古賀茂明サロン」主催。

 しかし、高橋まつりさんの場合は、過去に同様の案件で是正勧告を受けたばかりの事件、しかも尊い若者の命までが奪われている。社長が10年くらい牢屋に入るべきだとご遺族が思ったとしても、不思議ではない。

 そう思って労基法を見ると、この違反に対しては、119条で「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」と書いてある。つまり、一番重くても半年の牢屋入りで終わりだ。会社が黙認していたら罰金が会社に科されるが、それも30万円。残業時間を偽って報告するなどの罪が加わっても数十万円罰金が増えるだけ。電通にとっては、下っ端社員が一晩に使う接待費と変わらず、痛くもかゆくもない。
 
 本件では、2017年1月に、高橋さんの当時の上司だった幹部社員が書類送検されたが、冒頭に紹介した4月20日の報道によれば、東京本社の幹部の追加の立件は捜査が難航しているという。

 電通の社長を聴取したと言っても、それは、法人である電通に罰金を科すかどうかの判断のための確認に過ぎないようだ。つまり、当時の責任者である前社長を牢屋に入れることは難しそうだ。 当初は、派手に、「電通を告発」とメディアでも大きく報じられたが、結局はこの程度で幕引きである。

 やはり、日本は変われないのか。

 そんな気がしてならない。

●先進国になれない残念な自民党の成長戦略

「過労死させる企業、電通」の問題は、ひとり電通だけの問題とは言えない。実は、この原因は、元をたどれば、自民党の政策の誤りによる部分も大きい。
自民党は、ずっと昔から、常に「成長戦略」を掲げ、それを実現するために「改革」の必要性を強調してきた。

 しかし、これまでどうしてもうまくいかなかった。原因はいくつかあるが、収入を増やすための主役となる企業が変わるための長期的な条件整備を自民党政権が怠ったからだ。労働条件もその重要な一部である。

 どの国も、先進国になる過程で出生率が下がり、少子化が進む。少子化が進むと、当然、人手不足が生じる。欧州諸国では、「人が足りないのだから、人は貴重な存在。つまり、人件費は高くて当たり前だ」という考え方に基づき、労働条件の引き上げなどの変革を進めた。経済的に豊かになったことで、より個人の尊厳を重視しようと考えるゆとりが、社会に生まれたという面もある。


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