問題はオランダの先発が、日本での2年間で通算16勝3敗をマークしているバンデンハーク(ソフトバンク)であるということ。オランダがA組を1位通過していれば対戦することはなかったはずだが、2位通過となったために日本戦での登板が確実だ。150キロ超の力強いストレートに、鋭いスライダー、ナックルカーブ、チェンジアップを織り交ぜ、スタミナも豊富。日本デビューから14連勝のプロ野球新記録を樹立した超優良助っ人を打ち崩すのは、侍打線といえども至難の業になる。

 そのバンデンハークが80球、6回まで投げるとして、奪えても2得点程度か。そうなると、日本の投手陣が6回までに3点以上奪われるとリードを許す展開で終盤を迎えることになる。一発勝負の試合の中でビハインドの状態で終盤戦となると精神状態的にも非常に良くない。バンデンハークが降板するまでに少なくとも同点の状態にしておくこと。もしリードした状態で相手エースを引きずり下ろすことができれば、日本が勝利する確率は非常に高くなる。

 攻略の鍵は“足”になる。2年間に渡って日本人打者を抑え込んでいるバンデンハークだが、日本でのデビュー直後からクイックの甘さは指摘されており、WBCの舞台でも足でかき回すことができれば投球のリズムも崩すことができるはずだ。1次ラウンド3試合では田中広輔(広島)が2盗塁で、中田、松田、坂本勇人巨人)が1盗塁ずつの計5盗塁だった侍ジャパン。小久保監督は「走って欲しくない場面では走るなというサインがあるが、それ以外は隙があればフリーで行っていい」と、選手に判断を任せる“グリーンライト”を貫いているが、オランダ戦でのバンデンハーク攻略のためには、その重要性がより一層増す。日本は前回大会の準決勝プエルトリコ戦、“グリーンライト”でダブルスチールに失敗し、それが敗戦に直結した苦い思いをしているだけに、なおさらだ。

 オランダ戦に勝利できれば、準決勝への道は大きく開ける。東京ドームのファンの後押しは必ず日本の力になる。その力を最大限に得るためにも、1次ラウンド同様に初戦で“ムード”を作りたい。本当の戦いは、これからだ。