羽生は3種類目となる4回転ループをSPとフリーで成功させて、今後のジャンプ構成をさらに難しくできる手応えを掴んだ。ただ、4回転サルコー+3回転トーループの連続ジャンプはSPとフリーでいずれも失敗に終わっており、シーズン最終戦の世界選手権に向けて4回転サルコーの調子をしっかりと上げてこられるかが鍵を握りそうだ。

 SPで4回転サルコーが2回転になるミスをおかして3位発進になり、フリーでもプログラムの後半の4回転サルコーからの連続ジャンプが2回転+1回転になった。この失敗を取り戻すために、予定していた3つのジャンプ構成を瞬時に組み替え、トリプルアクセル+3回転トーループ、4回転トーループ+2回転トーループ、そして最後にトリプルアクセルを跳んで見せた。多彩なジャンプ技術を持ち合わせ、かつ、演技中に自分のジャンプ構成をしっかりと把握できる頭の良さを兼ね備えている羽生だからこそできたリカバリーだった。これが功を奏してフリーで206.67点の1位になれたが、タイトル奪取まではあと一歩及ばなかった。

 過去2度、銀メダルに終わっていた羽生だが、3度目の出場でもまた銀メダルに終わった。最終滑走のチェンの得点が出た瞬間、初優勝を逃した羽生は両手をあごに当てて悔しそうな表情を見せていた。

「正直言うと勝ちたかった。シニア1年目の四大陸で銀メダルしか取れなくて、今回で3度目の銀メダルになりました。年々成長していると思いますし、年々やることも大変になってきて、また自分の限界に挑戦している感覚が非常に好きなので、今回は一番楽しかった銀メダルじゃないかなと思います。今日のフリーは挑戦的にやりました。初めて後半に4回転トーループを跳びましたが、今回のようなジャンプ構成のシミュレーションはしていなかったので、コンビ(連続)ジャンプが何本かなどの計算をしながら演技しました。今大会は4回転を4本跳ぶことが最重要で、その上、後半のトリプルアクセルも2本跳ぶことを重要視していました。なので、今回4回転サルコーを失敗したことはすごく悔しいことでした。だから、これからさらに練習を積んでさらに上手くなりたいと思いました。今回オリンピック会場で試合をしてみて、それほど疲れもなく、オリンピックをイメージしながらできたと思います。完璧な演技はできませんでしたが、フリー1位という結果を何とか取ることができましたので、いいプレオリンピック大会になったと思います」

次のページ