四大陸選手権でネイサン・チェン(中央)は羽生結弦(左)や宇野昌磨(右)を抑え優勝した(写真:Getty Images)
四大陸選手権でネイサン・チェン(中央)は羽生結弦(左)や宇野昌磨(右)を抑え優勝した(写真:Getty Images)

 2018年平昌五輪プレ大会を兼ねたフィギュアスケートの四大陸選手権が19日に閉幕した。最終日に行われた男子フリーは、4回転の成否で勝負の行方が左右するという、新時代らしい見応えある面白い戦いとなった。

 ショートプログラム(SP)3位の羽生結弦はフリーで206.67点の1位となったものの、合計303.71点で総合2位に留まった。後半に予定していた4回転サルコーからの連続ジャンプが不発に終わり、終盤のジャンプ構成を難度の高いジャンプに変更してリカバリーを試みてフリーの今季最高得点を更新したが、逆転初優勝はならなかった。

 SPで自身初の100点台となる100.28点で2位だった宇野昌磨はフリーで187.77点の3位となり、合計288.05点の自己ベストを更新するも総合3位だった。今大会で初めて試合に組み込んだ冒頭の4回転ループと昨季習得した4回転フリップは成功させたが、後半の得点源となるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒してしまった。SP11位の田中刑事は合計220.18点の13位に終わった。

 開催まで1年を切った平昌五輪の本番会場で行われた四大陸選手権を制したのは、17歳の若き4回転ジャンパーで全米王者のネイサン・チェン(米国)。難度も基礎点も高い4回転ルッツと4回転フリップを武器にするチェンは、SPでも大技2本を完璧に決めて103.12点で首位に立ち、フリーでは国際大会で初めて4回転を5本も決めて自己最高得点となる204.34点をマークして合計307.46点をたたき出した。300点台突破の大台は史上3人目で、フリーの200点超えも史上4人目の快挙。SP、フリー、合計のいずれも自己ベストを大幅に更新し、五輪王者・羽生の猛追を振り切って初優勝を飾った。

 五輪連覇を目指す絶対王者の羽生を脅かす驚異の若き4回転ジャンパーが、4種類5本の4回転を披露する圧巻の演技で五輪プレシーズンの四大陸選手権でついに覚醒した。このチェンの登場により、男子の五輪メダル争いは熾烈さに拍車がかかり、さらに群雄割拠の様相が増してくるだろう。欧州王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が不在なだけで、今年の四大陸タイトルを争った最終グループの顔ぶれは、おそらく来年の平昌五輪でもメダル争いの渦中にいる面々に違いない。そんな強豪がそろった四大陸で、日本勢の羽生と宇野がそろって表彰台に立ったのは喜ばしいことだ。

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