一方の宇野は、今大会で初めてプログラムに組み込んだ4回転ループをフリーで成功させたほか、4回転フリップ、4回転トーループの単発と連続ジャンプの計4本の4回転を見事に成功させた。しかし、まだ跳び慣れていない大技にGOE(出来栄え点)が2.43点もついたほどの完璧な4回転を跳んだことで、気が緩んでしまったようで得点源のトリプルアクセルの失敗に繋がった。後半のトリプルアクセルを2本成功させていたら、きわどい順位争いが繰り広げられていただろう。

 今大会で宇野も羽生と同じく3種類の4回転を手に入れ、SPとフリーで計6本を跳ぶジャンプ構成を組んで勝負に挑んできたことは、宇野も羽生やチェンに負けず劣らず、五輪メダル候補の一人であり、今後も表彰台の常連になることは間違いないはずだ。

「練習ではなかなか決まっていなかった4回転ループを本番のプログラム冒頭で決められたことは強い気持ちがあったからだと思います。ただ、前半の4回転ジャンプを降りたことで、後半に跳ぶ予定だった確率のいいトリプルアクセルで気持ちを強く持てず、跳べるだろうという気持ちの甘さから失敗に繋がってしまった。今後、4回転の種類を増やしていきたいと思っていますけど、4回転の本数が多くなっても、安定してジャンプを降りて安定してプログラムを演技できる人が優勝すると思うので、僕もいまよりももっと安定感を磨いていかなければいけないです」

 自分がやるべきことをしっかりやれば、臨んだ結果を手に入れることができる手応えを羽生も宇野も掴んだ四大陸だった。それだけに、1カ月後に迫る世界選手権(ヘルシンキ)でどんな戦いを両者が見せてくれるのか、来季を占う大事な五輪プレシーズンの締めくくりの試合が楽しみでならなくなった。(文=フリージャーナリスト・辛仁夏)