荻田医師は忙しい仕事の合間を縫って、今も4カ月に1度はライブに参加し、ジャズピアノを弾いている。漫画の“ベイビー”のように正体を隠したりはしていない。最近では、日本産科婦人科学会の懇親会などでも演奏活動をしている。

ドラマの撮影現場でインスパイアされる

 15年にテレビドラマ化され、「コウノドリ」ブームは一つのピークを迎える。

「ドラマでは、さらに細部まで表現されていて、病院のセットもすごくこだわって作ってあった。作品に対する思い入れも強く感じましたし、プロの仕事に逆にこちらがインスパイアされる部分が多かったですね」

 ドラマで主人公サクラを演じた俳優の綾野剛さんは、撮影前にお忍びで当院を訪れた。荻田医師は綾野さんの役作りへの熱意に驚かされたという。

「綾野さんとはその後も何度かお会いしているんですが、そのたびに質問攻めにあうというか、現場での言い方とか感じ方について細かく聞かれました。僕は普段、関西弁なので『それは使えないなあ』とかよくおっしゃってましたね」

 綾野さんは、同ドラマのインタビューで「僕ら産婦人科医は……」と思わず発言してしまうほど役にのめり込んでいたというエピソードもある。

「サクラを綾野さんに演じてもらえてよかったです」

(文・石川美香子)

※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より抜粋