本人の口からその真意についてはまだ語られてないが、現地の報道では「ホームシック対策」とされている。アルゼンチンのスラム街出身のテベスは、実の父親が銃で撃たれて殺害された。母親の再婚相手に大切に育てられ、厳しい環境の中でもサッカーの才能を順調に育んだ。そして、10代からアルゼンチンの名門ボカ・ジュニオルスで活躍し始めた。点取り屋でありながらも、積極的に守備をするなど、威圧感のある風貌からは想像しにくいが、“献身性”も備える。

 20代前半で欧州に渡ると、マンチェスターユナイテッド、マンチェスターシティ、ユヴェントスなど欧州の名門チームを渡り歩き、リーグ得点王を取るなど大活躍してきた。2年前にボカ・ジュニオルスに復帰してアルゼンチンに戻ったが、その理由のひとつは、母国で家族との時間を大切にしたかったからと言われている。ただ、一方でアルゼンチンは治安が決して良いとはいえない。3年前には育ての父親が誘拐された。身代金を払って無事に解放された。また、上海への移籍騒動で揺れていた年末には、長年事実婚だった奥さんとの結婚式を挙げているさ最中に、自宅が空き巣被害にあってしまった。

 せっかく母国に戻ってもこの環境下では、奥さんや3人の子供も安心して過ごせない。ただ、アルゼンチンから地球の反対側となる中国への移籍となると、また母国や家族への思いが募る。そこで取った手段が、上海に来てもテベスが安心できるように、奥さんや子供たちだけでなく、親族一同や親友まで連れて来ることだった。

 さすがにこれだけ囲まれているなら、テベスがホームシックになることはないと思われる。また、幸い上海には多くの欧米の街並みや店がある。

 上海緑地申花の2017シーズン最初の試合は、2月7日のアジアチャンピオンズリーグ3次予選。一家そろってバックアップするテベスが、中国でも大暴れすることは間違いないだろう。