娘といってもおかしくないほど歳の離れた選手たちとも、分け隔てなく接する。そのコミュニケーション力こそが、中田監督の持つ才であり、大きな武器だ。選手の個性を見抜き、声をかけるタイミングを計り、精神面のフォローが必要だと思えば1対1で何時間も時間を割いて本音を語り、技術面で迷っていると感じればデータや映像を一緒に見ながら「こうしたほうがいいんじゃない?」とさりげなく方法を導き出す。

 現役時代から今も光るカリスマ性だけでなく、今も選手を惹きつける力は、綿密なコミュニケーション力があってこそ、なされてきたものだった。

 ユース代表でも見せた抜群のコミュニケーション能力は久光製薬でも発揮され、Vプレミアリーグや天皇皇后杯を連覇するなど、強豪を常勝チームへと引き上げた功績が今回の監督就任につながっているのは間違いない。

 とはいえ、リオデジャネイロ五輪で見せつけられたように、世界の進歩は想像をはるかに超えるスピードで進み、大型化は当たり前、190センチを越える選手も器用に基本のプレーを確実にこなすスキルを持ち、なおかつ自分が生きるための武器を持ち、戦術理解度、遂行度も高い。もちろんそれはシニア代表に限らず、ユースやジュニア(U-19)年代も同様だ。

 その中で勝つために、どんな手を打つべきか。

 中田監督は久光製薬で「ワンフレームのバレー」を実践してきた。動きのスピードを高め、パスは高く上げずに流れるような動きの中で精度の高いバレーを展開するスタイルのことだ。「手段としては必要になってくると考えている」と就任会見で述べたように、おそらく「ワンフレームのバレー」が中田監督率いる新生日本代表のベースとなるのは間違いないが、それだけでは勝てないことも世界クラブ選手権で嫌というほど思い知らされている。

世界で勝つために最も適した方法は何か。きっと頭の中の設計図には、幾重にも進化した戦い方が描かれているはずだ。

 選手もコーチも少数精鋭で臨み「日の丸のプライド」を伝えたい、と語る新指揮官がどんなチームをつくり、どんなバレーを魅せるのか。新たなステージでの挑戦の行方に、期待は高まるばかりだ。(文・田中夕子)

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