そしてフリーでは最初の4回転ループと4回転サルコウを決めて流れのある演技をしながらも、後半は崩れて4回転トゥーループと3回転ルッツで転倒し、疲れ切った表情で演技を終えた。SP、フリーとも1位で圧勝という形になったが、合計得点は260.57点と納得できないものだった。

「見ての通りにかなりバテた感じはあったと思います。でもそれは体力的な問題ではなく、呼吸の仕方であったり、力の使い方だったりだと思います。ひとつひとつの要素をもっと効率よくできれば、もうミスはしないと思うので……」

 昨年も初戦に選んだオータムクラシックでは納得いく演技ができなかったが、その時は後半に入れた4回転トゥーループを過剰に意識していることを口にし、迷いもある表情を見せていた。だが今季はそんな表情はなく、結果をそのまま素直に受け取ろうとする表情だった。昨年のような迷いはなく「もうやるべきことは決まっている」と、心はスッキリしている状態だからだろう。

「フリーの4回転を4本という構成はしんどいですね。でもそれは楽しいし……、やっぱり燃えますね」

 明るい表情でこう話していた羽生が、グランプリシリーズ初戦のスケートカナダではどこまで仕上げてくるか。彼の負けん気の強さに期待をしたい。(文・折山淑美)