五輪プレシーズンで高難度プログラムに挑む羽生結弦(写真:Getty Images)
五輪プレシーズンで高難度プログラムに挑む羽生結弦(写真:Getty Images)

 今年4月3日までの世界選手権以降は痛めた左足甲の治療に専念し、アイスショーの出演すらなかった羽生結弦。9月にカナダで行われた公開練習では「世界選手権最終日のエキシビションの演技以降は歩くだけでも衝撃がかなりあるので、日常生活でも必要最小限の移動だけにするように制限され、1カ月半はリハビリすらできずに安静している時期が続いた」と明かした。そのために練習再開は6月からになったが、完治していたわけではないため、跳べるジャンプの種類も制限されている状態だったという。

 そんなオフを過ごしてきたにも関わらず、今季の羽生は昨季よりさらにレベルを上げた技術構成のプログラムを選択した。ショートプログラム(SP)では、冒頭に4回転ループを跳び、次に4回転サルコウと3回転サルコウの連続ジャンプ、そして後半にトリプルアクセルを入れる構成。そしてフリープログラム(FP)は最初に4回転ループと4回転サルコウ、3回転フリップを跳び、後半に入ってからは4回転サルコウと3回転トゥーループの連続ジャンプ、4回転トゥーループ。さらにトリプルアクセルからの2連続と3連続の連続ジャンプを続ける構成となっている。

 これまでのサルコウより基礎点が高いループをショートとフリーの両方に入れただけではなく、フリーでは2種類3回だった4回転ジャンプを3種類4回に増やした、難易度を上げたプログラム。痛めた左足のスケートの先端を氷に突いて跳び上がるトゥーループの練習ができなかったため、難度の高いループとサルコウの練習量の方が多かったという理由もあるだろうが、常に「去年より進化したい」と思っている羽生らしい選択でもある。

 そんな羽生のシーズン初戦となった9月29日からのオータムクラシックでは、まだ仕上がり切っていない現状を見せる結果となった。SPでは最初の4回転ループを着氷をこらえて決めて、世界初の試合での成功者になった。だが次のサルコウ+トゥーループの連続ジャンプはスピードがない踏み切りになり、1回転+3回転となるミス。後半は立て直したが88.30点と納得いかない得点に止まった。

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