ミランで出場機会に恵まれていない本田圭佑(写真:Getty Images)
ミランで出場機会に恵まれていない本田圭佑(写真:Getty Images)

「ミランの背番号10が中国に移籍するかもしれない」

 一昔前であれば、大きな反響を呼んだだろう。だが、上海上港が本田圭佑について調査しているという日本からの報道は、イタリアでさほど騒がれなかった。

 ニュースそのものは、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の紙面や一部ウェブサイトで紹介された。だが、そのほとんどが日本メディアの報道をなぞらえたのみ。そして、うわさ好きのイタリアで、この話題はそれほど取り上げられていない。

 なぜか。それは残念ながら、ミランにおける本田の存在感が低下しているからだ。

 契約最終年となる今季、本田は苦境に立たされている。新たに就任したヴィンチェンツォ・モンテッラ監督のもとでレギュラーポジションを失い、リーグ戦9試合で出場したのはわずか2試合。それも終盤からの途中出場で、アディショナルタイムを除けばプレー時間は20分にも満たない。

 開幕直後こそ、4-3-3の新システムにおけるスソとの右ウィングのポジション争いが取り上げられた。だが、スソが一定のパフォーマンスで指揮官の信頼を勝ち取った今、両者の関係は「ポジション争いのライバル」から「レギュラーと控え」で確立されている。

 シーズン前半戦で出場機会がなければ、1月の移籍がうわさになるのが定番だ。実際、日本での報道以前も、一部のイタリアメディアが中国やアメリカに移籍する可能性を伝えることはあった。ただ、いずれも具体性を欠くものでしかなく、一過性のものに過ぎない。

 チームの好調も、本田の存在感低下の一因だ。近年の低迷に加え、目立った補強がなく、開幕前の評価は高くなかったミランだが、第2節と3節で連敗して以降は6試合負けなし。現地時間22日の第9節では、本拠地で首位ユヴェントスも撃破した。5連覇中の絶対王者に勝ち点2差の2位タイとあれば、メディアやサポーターがピッチ外のうわさを騒ぐより、モンテッラ監督やチームを称賛するのも当然だ。

 紙面を飾るのは、指揮官の手腕や今シーズンの特長の一つである若手への賛辞だ。現在のミランは守護神ジャンルイジ・ドンナルンマ(17)、最終ラインの軸に成長したアレッシオ・ロマニョーリ(21)、両ウィングのエムバイェ・ニアン(21)とスソ(22)など、若きタレントたちが支えている。最近では、負傷離脱した主将リッカルド・モントリーヴォの代わりにマヌエル・ロカテッリ(18)という新たな若手も登場した。

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