ホームにもいろいろな場所があります。不安な点は正直に伝えれば、相手の力量がわかることもあります(※イメージ写真)
ホームにもいろいろな場所があります。不安な点は正直に伝えれば、相手の力量がわかることもあります(※イメージ写真)
「有料老人ホーム・介護情報館」館長の中村寿美子さん
「有料老人ホーム・介護情報館」館長の中村寿美子さん

 介護もさまざまです。立場によって悩みも多岐にわたるため、なかなか相談しづらいという人も多いでしょう。そこで、週刊朝日ムック『高齢者ホーム2017』に掲載した、「有料老人ホーム・介護情報館」館長の中村寿美子さんの「介護のお悩み相談室」を特別に公開。中村さんにさまざまな悩みに回答いただきました。

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【お悩み その1】同居している母が入浴したがらない(57歳女性)
 一緒に暮らす80歳の母が、もう3週間近くお風呂に入っていません。娘の私が入浴するように言っても聞き入れないので、孫たちに言わせてみました。それでも「私は大丈夫だから、あなたたちが先に入りなさい」と言うばかりです。どうしたらお風呂に入ってくれるでしょうか。

【回答】
 昔はお風呂好きだったという人でも、高齢になると入浴を嫌がるケースがあります。老人ホームでも、「お風呂に入りましょう」と熱心に誘う職員に、もっともらしい理由を考えて断る入居者の姿はおなじみの光景です。

 入浴には心身の清潔を保つだけでなく、健康・安眠・リラックス効果などもあります。ですからぜひ入ってもらいたいのですが、高齢者にとって入浴は、体力を消耗する重労働なのです。さらに、過去に入浴中に気分が悪くなったり、転んだりといった怖い体験をすると、それが入りたくないという思いにつながるようです。

 まずは、入浴が安心できて心地よいものであると、お母さまに感じてもらうのが一番でしょう。お母さまの好きな香りのせっけんや入浴剤を用意するとか、脱衣所で声をかけながら見守ってあげれば、「お風呂で何かあったらどうしよう」という不安が解消されます。

 また、浴室の環境を整えるのも一つの方法です。段差をなくす、手すりをつける、お風呂用の椅子を置く、すべりにくい床材にする、などが考えられます。自治体によってはこうしたリフォームに補助金制度を設けているところもあります。

【お悩み その2】骨折してから母の元気がなくなった(60歳女性)
 早い段階から自宅をリフォームし、健康に気を配ってきた母(83)が転んで骨折しました。入院してからはすっかり元気がなく、出された食事を取ろうともしません。「死にたい」とまで言う母にどう接するのがよいのでしょうか?

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